自動車を対象とした情報提供サービス。無線通信を利用して、トラブル時の対応支援や盗難車両の位置追跡、行き先の気象情報、小売店の決済などを提供するサービスのことである。サービスを利用するには、専用の車載機器が必要になる。今後はカーナビゲーション・システムに組み込まれていくものと予想される。

 カーナビゲーション・システムをご利用の方であればご存じの通り、DVD(デジタル多用途ディスク)やハードディスクといった大容量記憶媒体を搭載した製品は、膨大な情報を搭載しています。例えば、居場所の近くにあるコンビニや銀行を検索したり、観光スポットの情報を参照することが可能です。


 しかし、現在のカーナビには限界があります。それは、リアルタイムの情報を提供できないことです。例えば、行き先の天気を調べたり、駐車場の空きスペースを検索するといったことは実現できません。既存のカーナビでは、渋滞状況などを提供するVICS(道路交通情報通信システム)と呼ばれるサービス以外は、リアルタイムの情報を表示できないのです。


 こうした限界を超えるべく開発されたのが「テレマティクス・サービス」です。携帯電話などの無線通信機器をカーナビのような車載機器に接続して、利用者の居場所や状況に応じたリアルタイムの情報を提供します。

◆効果
居場所に対応した情報を即時提供

 現在、自動車メーカーを中心に様々な新サービスの開発が進んでいます。金融機関と提携して小売店や外食店における決済を実施したり、損害保険会社の営業担当者が遠隔地で事務処理できるサービス,警備会社と連携した自動車の遠隔監視、音楽や映画といった娯楽ソフトのダウンロードといったサービスの開発が進んでいます。


 日経BPコンサルティングが昨年10月に実施した「クルマの情報化市場調査」」(http://branding.nikkeibp.co.jp/mk/2087/1.html)によると、テレマティクスに対する消費者のニーズが高いことが分かります。例えば、「行方不明者の現在位置検索」という項目では、95.7%もの回答者が利用したいと答えています。ただし、「有料でも」と答えたのは46.0%。残りの49.7%は「無料なら」という条件付きです。


 確かにテレマティクスで提供されるサービスは便利そうですが、料金を払ってまでは利用したくないというのが本音なのでしょう。


 それに、決済やリアルタイムの情報提供といったサービスは、携帯電話向けサービスでも開発が進んでいます。車載機器ならではのサービスの提供が、テレマティクスを普及させるカギとなるでしょう。

◆事例
自動車メーカーが普及に本腰

 日産自動車は3月に発売した小型乗用車「マーチ」に、テレマティクス・サービス「カーウイングス」を利用できる車載機器を搭載できるようにしました。この機器を通して、交通情報や天気、イベント情報などを入手できます。


 トヨタ自動車も昨年10月に、米ゼネラル・モーターズと提携して新しいテレマティクス・サービス「G-ブック」を提供することを表明しています。

吉川 和宏 kyoshika@nikkeibp.co.jp