人事や経理、情報システムの開発・運用といった企業で共通する間接業務を、同一のグループ内で1カ所に集約してサービスを提供すること。集約化によってスケール・メリットが得られ、コストを削減できる。さらに、対価と引き換えにサービスを提供することで間接部門の意識変革につながり、業務品質の向上も期待できる。

 ここ数年、グループ内で「○○シェアードサービス」「××ビジネスサービス」といった社名の新会社を設立する企業が目立ちます。

 それらの多くは人事部や経理部、情報システム部など、間接部門と呼ばれる部署が分離独立してできた会社です。従来はグループの各社内で処理していた人事・給与や経理などの業務を、専門に請け負う新会社に一括してアウトソーシングするわけです。こうしたサービス形態を「シェアードサービス」と呼んでいます。

◆効果
コスト削減と業務品質の向上狙う

 限られた経営資源の配分を考えていくうえで、企業価値を生み出す「コア部分」に重点的に資源を充て、それ以外の部分はできるだけ効率化して少なくする“選択と集中”が企業共通の課題になっています。

 複数の関連会社を持つ企業グループの多くは会社ごとに、給与計算や経理処理をしていました。しかし、直接利益を生まない間接部門がいくつも重複して存在するのは、明らかに非効率です。

 間接部門は社内事情を知り抜いたサービスが提供できる半面、コスト意識は甘くなりがち。そこで、シェアードサービスの第一の狙いは、コスト削減です。コンピュータ処理が進んだ現在、同じような処理をしている部門やシステムは統合したほうがスケール・メリットを得られます。間接部門の人数を削減して他業務の支援に回すこともできます。

 とはいえ、コスト削減だけが目的ではありません。あえて別会社にするのは、「顧客」を意識し、サービス提供者としての価値を改めて確立するためでもあります。多くの企業はシェアードサービス会社の価格やサービスに競争力がついた段階で、外部へのサービス提供を狙っています。

◆課題
業務の標準化が不可欠

 シェアードサービス会社が本来の目的を達成するためには、乗り越えなくてはならない大きな壁があります。グループ内の業務の標準化です。

 同じグループ内でも、関連会社を細かく見れば業務規定はまちまちです。業務を集約してスケール・メリットを出すためには標準化を避けては通れません。連結経営の実現のためにも、共通業務の標準化は重要課題です。

 そこでシェアードサービス会社は、グループ内企業の間接業務の改革を先導するという役割も担うことになります。単に各社の業務を棚卸しして最大公約数的な仕組みを作るのではなく、効率と効果を最大限に上げるための業務の「あるべき姿」をデザインし、具現化していく力量が求められます。

 シェアードサービスに取り組む企業の最近の例としては、帝人やパイオニア、松下電器産業などが挙げられます。

秋山知子 takiyama@nikkeibp.co.jp