消費者がインターネット上で利用するID(識別符号)やパスワードを預かり、それを使って、消費者の代理として複数のウェブ・サイトから情報を収集。一括して画面上に表示するサービスのこと。顧客の利便性を高め、自社サイトに囲い込む狙いがある。米国の金融機関を中心に普及しつつあり、日本でも注目が集まっている。

 インターネットが普及するにつれて、個人で管理すべきID(識別符号)とパスワードも増える一方です。

 例えば、ネット・バンキングにはIDとパスワードが付き物です。複数の銀行に口座を持っている人なら、それだけで、いくつものIDとパスワードを管理しなければなりません。ネット証券取引の利用者も、取引用のIDとパスワードを持っていることでしょう。

 増え続けるIDとパスワードを覚えておくだけでも大変な労力です。しかも、それが金融機関のIDとなると、セキュリティにも配慮しなければなりません。

 インターネットの普及によって、時間を選ばず好きなときに情報にアクセスできるなど、生活は便利にはなりましたが、その一方で「増え続けるIDとパスワードの管理」という問題も生じているのです。

◆効果
自社サイトに顧客を囲い込む

 「IDなどを管理する便利な方法はないか」——。消費者のこうしたニーズに応えて登場したのが、「アカウント・アグリゲーション」と呼ぶサービスです。

 消費者はアグリゲーション・サービスを提供する金融機関に、他の金融機関のIDとパスワードを登録し、代わりにアグリゲーション用の新たなIDとパスワードを発行してもらいます。次回以降は、このIDとパスワードだけで登録金融機関の口座情報をウェブ上で一括照会でき、複数のID・パスワードを管理する手間がなくなります。

 金融機関にとっては、顧客の利便性を高めることで自社のウェブ・サイトに顧客を囲い込む武器になります。

◆事例
日本でも参入が相次ぐ

 アカウント・アグリゲーションは米国では99年から始まり、すでに広く普及しています。日本ではマネックス証券が2001年9月に開始しました。顧客は同社のウェブ・サイト上で、同社と新生銀行、富士銀行の口座残高、クレディセゾンのカード利用履歴を一括照会できます。

 金融機関などがアグリゲーション・サービスを導入するためのプラットフォームを提供しようという動きも出てきました。電通国際情報サービスと日立製作所、ソフトバンク・テクノロジーの3社は8月、共同出資でアグリゲーション・サービスのインフラ提供会社を設立。2001年中にはサービスを開始する予定です。NTTデータ(本社東京)と野村総合研究所(同)も参入を表明しています。NTT東日本とぷららネットワークス(同)も、2002年3月ごろをメドにサービスを開始する予定です。

 アグリゲーションの対象は金融機関の口座情報にとどまりません。航空会社によるマイレージの情報やウェブ・メールなど、消費者がIDとパスワードを使ってウェブ上でアクセスするタイプの情報は、ほぼ同様に一括表示できます。

花澤 裕二 hanazawa@nikkeibp.co.jp