世界中に張り巡らされたインターネットを使って、音声をデジタル化して通話する仕組み。通話距離が遠い場合、通常の公衆電話回線を使うよりもコストが安くなる。1997年の規制緩和以降、企業内での利用例が増えている。音声品質を維持する技術は改善の余地があるものの、国際電話や長距離電話などで主役となる可能性はある。

 日々行き交うインターネット上を流れるデータの種類に制限はありません。そこで、アナログ音声をデジタルデータに変換して、インターネットを通じてやり取りし、電話として使おうというのがインターネット電話の発想です。

 VoIP(voice over internet protocol)というキーワードもよく聞きますが、VoIPは音声をインターネット網で配信する技術の総称で、インターネット電話はその利用方法の1つです。

 インターネット電話を利用するには、音声からデータに、データから音声に変換するための装置が必要です。その役割を担うのはパソコンやVoIPゲートウェイという装置です。VoIPゲートウェイは、普通の電話機を接続するためのものです。

◆効果
通話コストを下げる

 インターネット電話を使うメリットは、ずばり通話コストが下がることです。インターネットを使う場面を思い起こしてください。海外のサイトにアクセスしたからといって、通話料金は変わりません。つまり、最低の通話料金で、国内でも海外でも好きな相手に電話できるのです。

 加入手続きさえすれば、使用している電話機で始められるサービスがあります。ジェンズ(JENS)のインターネット電話サービス「AT&T@phone」は、相手が固定電話(国内)なら15~23円/分、携帯電話ならば70円/分です。

 最近注目を集めているのが、企業の内線電話とコンピュータネットワークを統合した新サービスです。内線電話とネットワークを別々に管理する必要がなく、ランニングコストの重複感もありません。日本テレコムが提供しているサービス「SOLTERIA(ソルテリア)」を使った場合、例えば全国47カ所の拠点をイントラネット化するとランニングコストは月額380万円程度。もし、同じ規模で専用線を使ったネットワークを構築しようとしたら、ひとケタ違うはずです。

◆課題
回線速度に左右されやすい

 インターネット電話の音声データは、細切れになった小さな固まりになって、ネットワークの中を流れています。細切れにすることで、ある瞬間に誰かがネットワークを占有することを避けられます。

 ただし、ネットワークが混雑している場合や使用している回線が細かったりすると、細切れになった音声データが順番通りに流れてこない、途中で消失してしまうといった問題が起きる可能性があります。そうなると音声が途切れる、遅れてやってくるといった現象が発生します。

 そうした問題を解決する新しい技術がどんどん開発されています。また、ブロードバンドがすべてを解決する可能性もあります。そうなれば高品質で低価格の通話体系が確立されます。インターネット電話は、その将来性が楽しみな存在なのです。

渡辺 一正 kwatanab@nikkeibp.co.jp