ICカードのうち、読み取り機にかざすだけで情報をやりとりできるタイプのこと。読み取り機に差し込む接触型と比較すると、操作性やメンテナンス性に優れる。従来の磁気カードに比べて記憶容量が大きく、セキュリティ面で優れる。乗車券や各種チケット、電子マネーなどを中心に実用化が見込まれる。

 現在広く使われているクレジットカードやキャッシュカード、プリペイドカードなどは、磁気カードと呼ばれるものが主流です。磁気カードとは、カードに埋め込んだ磁気ストライプの部分に情報を記録しておき、必要なときに読み取り機で読み出す仕組みです。

 ところが最近、磁気カードに関する問題が強く指摘されるようになりました。記録できる情報量が少なく、偽造に弱いことです。

 このため、金融業界を中心にICカードへの変更を急いでいます。日本クレジットカード協会に加盟するカード会社205社は、2003年からICカードに切り替えることで合意しました。ICカードの最大の特徴は、従来の磁気カードの200倍もの情報を記録でき、高度なセキュリティを施せる点です。

◆特徴
使い勝手に優れる非接触型

 ICカードには2つのタイプがあります。読み取り機に差し込んで使う「接触型」と、読み取り機にかざすだけで済む「非接触型」です。銀行やクレジットカード会社などは接触型ICカードを採用しますが、最近は非接触型の注目度が上がっています。

 非接触型のメリットは、読み取り機に差し込む必要がないため利用者にとって使い勝手が良いことと、カードや読み取り機の構造上、メンテナンスの手間を軽減できる点です。このため、様々な分野で採用計画が相次いでいます。

 大規模な導入事例としては、99年春からNTTが導入したICテレホンカードがあります。今後は、交通機関の乗車券や施設、イベントのチケット、電子マネーといった分野を中心に普及しそうです。

◆事例
JR東日本が年内に大量導入

 JR東日本は今年中に非接触型ICカードの定期券「Suica(スイカ)」を導入します。改札機にSuica定期券をかざすだけで、改札を通れるようになります。定期入れに入れたままでも大丈夫なので、利用客にとって便利になるはずです。

 コンサートなどのイベントチケットとしての活用を考えているのが、チケット販売大手のぴあ(本社東京)です。顧客はインターネットなどでチケットを予約し、コンビニエンスストアや「チケットぴあ」窓口で公演名や席番号などのチケット情報をICカードに読み取らせます。会場では改札機にICカードをかざして入場します。2002年初頭の導入を目指しています。

 ソニーやNTTドコモなどは非接触型ICカードを使った電子マネー事業を、年内にも開始する計画です。

 当面は接触型と非接触型は用途に応じてすみ分けがされる見込みですが、将来的にはこれらが1枚になる可能性もあります。すでに大日本印刷や凸版印刷などが、接触・非接触一体型のICカードを開発済みです。

花澤 裕二 hanazawa@nikkeibp.co.jp