既設の電話線を利用して高速なデータ通信を実現する技術の総称。ISDN(統合デジタル通信網)よりも高速なインターネット接続ができると、中小企業や個人を中心に関心を集めている。現在主流のサービスでは、利用者がデータを受信する際の速度は500キロビット/秒程度で、月額5000~7000円ほどで利用できる。

 次世代インターネットの基盤として各家庭に光ファイバーが引き込まれれば、滑らかな動画の配信など様々なサービスが可能になると期待されています。しかし、光ファイバーの敷設にはコストも時間もかかることから、そうすぐには実現できそうもありません。

 そこで、すでに普及している電話線を利用して、より高速なデータ通信を可能にする研究が進みました。これがxDSL(xデジタル加入者線)と呼ばれる技術です。利用者がデータを送受信する際の「送り」と「受け」の速度が同一なSDSL、受けのほうを高速にするADSL、2対の電話線を使うHDSLなど、頭文字が違ういくつかの方式がありますが、これらを総称してxDSLと呼びます。

◆特徴
安価に高速ネット接続

 ADSL方式を中心に、すでに国内でもサービスが始まっています。1999年12月に東京めたりっく通信(本社東京)、ニューコアラ(本社大分市)、エヌ・ティ・ティ・エムイー(本社東京)がサービスを開始。その後、2000年になってKDDIや日本テレコム、イー・アクセス(本社東京)などが参入して徐々に認知度が上がってきました。

 通常はこれらのADSL業者から、「スプリッタ」および「ADSLモデム」という専用装置をレンタル(リース)で入手してパソコンと接続すればADSLを利用できるようになります。

 xDSLのメリットを一口にいうと「快適なインターネット環境が安価で利用できる」ということです。

 まず速度について少し技術的な話をすると、ISDNよりも高い周波数帯域を利用してデータ通信するため、従来からのアナログ回線のモデムやISDNのTA(ターミナル・アダプタ)の数百倍に相当する約10メガビット/秒ものデータ転送が可能になるとされています。現行サービスでは、まだ500キロビット/秒程度が主流ですが、それでもISDN(64キロビット/秒)に比べるとかなり高速です。

 次に料金は、現在は月額固定で5000~7000円程度と安く設定されています。常時接続サービスなので、いちいちダイアルアップして接続する煩わしさもありません。

◆課題
利用地域が限られる

 ただしADSLを代表とするxDSLは、まだ利用できる地域が限定されています。大分市や福岡市でサービスを提供しているニューコアラは例外ですが、多くのxDSL業者は、まずは首都圏と大阪地区でサービスを開始し、徐々に対象を周辺地域に拡大する方針です。このため全国的にはまだ使えないエリアが多いのが実状です。

 さらにxDSLは既設の電話網を対象とした技術であるため、光ファイバーでは適用できません。政府は「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」で光ファイバーを中核にすえた情報インフラを早急に構築することをうたっていることから、xDSLはあくまで過渡的な技術と見る声もあります。

川上 潤司 junji@nikkeibp.co.jp