企業などの組織において抜本的な業務改革を進めたり、新規事業を展開したりする際に、先頭に立って取り組む推進役のこと。鋭い着眼力や周囲を納得させられる説得力、リーダーシップを備えた実行力といった資質を備える必要がある。こうした人材を育成するために、組織としての対応が求められている。

 大手都市銀行や生命保険をはじめとした金融機関を中心に、大型の企業合併が盛んに繰り返されています。規制緩和による異業種の参入や本格化するグローバル競争のなかで生き残ろうと、どの企業も必死です。

 こうした例に限らず、日本企業は痛みを伴う大きな改革の荒波を受けています。業務の見直しや人員削減といったことに、無縁でいられる企業は少ないはずです。

 その際に、変革の原動力になる推進役を務めるのが、「チェンジリーダー」とよばれる人材です。いくら組織として変革を意思決定しても、それを実践するのはあくまでも人間。そのなかに能動的に取り組める人材がいるかどうかが、企業における変革の成功を左右すると言っても過言ではないでしょう。

 チェンジリーダーは肩書きや人数に制限はなく、ましてや意図的に選ぶものではありません。チェンジリーダーが自然発生的に育ち、生き生きと活動できる環境を整えることが必要です。

◆効果
着眼力、説得力、実行力が不可欠

 そのチェンジリーダーが備えるべき資質は3つあります。

 1つ目は、過去の常識にとらわれない鋭い着眼力です。いくら変革を進めようという意思があっても、その方向性がずれていては意味がありません。

 2つ目の資質は、周囲を統率する説得力です。変革の必要性を叫ぶばかりでは、周囲の人々が一緒に行動を起こしてくれません。自分の思いや考えを分かりやすく伝え、共感を得る能力が必要です。

 そして3つ目の資質は、実績が伴った実行力です。自らの手を汚さないタイプには、誰も追随しないのは当たり前。常に先頭に立ち、先陣を切って取り組む意識が欠かせません。

 こうしたチェンジリーダーが役員、管理職、現場といった各階層に存在すれば、組織として変革に取り組む姿勢が整ったと言えるでしょう。

◆課題
チェンジリーダー育てる環境作り

 チェンジリーダーを育成するにはまず、部署や肩書きに関係なく社員同士が自由に議論できる仕組みが不可欠です。部署ごとのセクショナリズムがまん延していたら、変革に向けた建設的な意見を出す人材は生まれてこないでしょう。

 それに加えて、チェンジリーダーになり得る人材を積極的に発掘し評価する仕組みが重要です。

 例えば富士ゼロックスは、日常業務の中で改革の必要性を感じている社員を公募しています。そうした社員が具体的な実行計画をまとめ上げて役員に提案できるまでを支援する、全社的なプログラムである「バーチャルハリウッド2」を実践しています。

神保 重紀 sjin@nikkeibp.co.jp