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POSに表れない心理を読む
ショッパーリサーチは、アンケートや座談会の形式で、特定の店舗の売り場に対する印象や不満、理想といったことを尋ねていく。さらには商品カテゴリー別に、売り場でどのように商品を探すかという購買心理を探り出す。1000人規模の消費者を対象とするアンケートと、10人程度に参加してもらい数時間にわたって取材する座談会を組み合わせるのが、典型的なショッパーリサーチの手法だ。顧客心理を売り場に積極的に反映するようになったのはここ1~2年。従来は、POSデータをはじめとする定量的なデータを中心に売り場を作っていたが限界を感じ始めていたという。
「POSデータだけでは売り場のブレークスルーは難しい。買い物客の心理を売り場に取り込むことによってさらに売り上げを拡大できる」。営業統括本部の根岸太郎アカウント エグゼクティブ アナリストはこう説明する。
実は、カテゴリーマネジメントで定評のある花王販売(東京・中央)も似たような壁にぶつかっている。2001年に、「CPM(カテゴリー・プロフィット・マネジメント)」と呼ぶ情報システムを開発したが、当初期待した通りに活用が進まなかった。
CPMは、POSデータから商品の需要を予測し、粗利や陳列スペースなどを加味して、どの商品をいくつ並べれば売り上げや利益を最大化できるかを自動的に計算する画期的なツールだった。だが、売れたか売れなかったかといった結果情報だけでは、顧客の心をつかむ売り場を作るのは難しかった。
「最終的には人が考えなければ、最適な売り場は作れない」。花王販売本店流通開発部の木下真也・統括部長はCPMがなじまなかった現状をこう分析する。(花王のカテゴリーマネジメントについては154ページの記事を参照)
専任チームが差異化を支援
P&Gのカテゴリーマネジメントの基盤となるのが、組織横断的に必要な人材を集める「チーム営業」である。
1997年に販売組織を改革。名称を「営業統括本部(CBD)」と変えて、営業担当者のほかに、マーケティング担当者やアナリストなどを同じ組織内に配置した。CBDを中心に、市場調査や物流、金融、情報システムなどの担当者を加えて、小売店チェーン別の専任チームを組む。大手チェーンになると、さらにカテゴリー別に担当者を配置することもある。
異なるチームに所属していれば、同じマーケティング担当者同士であっても情報をやり取りしてはならない決まりだ。担当している小売店のチームから移す場合は、およそ2年間は担当を外して別の仕事をさせるようにした。小売店から貴重なPOSデータを預かるには、情報の管理体制を厳しくする必要があるためだ。
「これまでは、取引先別に売り場作りの提案をきめ細かく変えることはあまりなかった」(冨岡カテゴリーマネジメントマネージャー)。だが、同じ業態、同じチェーンであっても、立地が異なれば来店客のし好や行動は異なる。店舗に合わせた売り場作りを徹底するために専任チームを設けるようにしたのである。これにより、個店に特化して顧客の心理を深く掘り下げられるようになった。
従来の体制では、特定の店舗の来店客に絞ってきめ細かい調査や分析をするのが難しく、「店舗ごとに買い物客の習性はすべて異なる」(根岸アナリスト)ことに対応しにくかった。
ヘアケア商品のほかにも、紙おむつや生理用品などの売り場を改善し、売り上げ拡大につなげている。P&Gは、カテゴリーキャプテンとなっている店舗数は明らかにしていないが、「(カテゴリーマネジメントを実施した店舗の売り上げが)国内の売り上げ増分のうち相当の割合を占める」という。
「商品の取引条件面では取引先ごとに差をつけていない。一方、新たな需要を創る売り場作りでは勝てるところと協力して差異化を進めていく」と冨岡カテゴリーマネジメントマネージャーは意気込む。