TOTOが2004年3月期に2期連続の増収増益を見込むなど好調だ。住宅リフォーム市場を開拓したことが、好業績の原動力になっている。施工業者を通して顧客との関係を強化し、「顧客生涯価値」を高めるのに成功した。

営業の対象を販売代理店から施工業者に変更した
リフォーム事業の比率は年々増加

 「水まわりのコンビニ」を目指す――。トイレやバスルーム関連製品を主力とするTOTOで、新たな戦略が軌道に乗り始めた。同社の商品を扱う販売代理店や施工業者を、トイレやバスルームなどの相談事を受け付ける「水まわりのコンビニ」として位置付け、リフォーム需要を取り込む戦略だ。ここに持ち込まれたトラブルや買い替えなどの相談を解決するなかで、商品やサービスを販売し、最終的にはリフォーム案件の受注に結びつける。

 さらに、施工業者に対して、顧客に提示する見積書や施工図を作成できるウェブ・サイトを提供し、業務を支援する仕組みも用意した。工務店が迅速に顧客へ提案できるようにし、リフォーム需要を逃さないためだ。

 2002年度の決算で、こうした一連の施策の効果が明確になった。TOTOをはじめとする住宅設備メーカーは元来、新築住宅市場を事業の中核に据えている。だが、TOTOの2003年3月期の決算では新築市場向けが前年比4.8%減の1943億円、リフォーム市場向けは14.2%増の1983億円と売上高が逆転した。リフォーム市場がけん引する格好で、売上高全体も4396億円と3.6%の増収になった。

 2003年度も2期連続の増収増益になる予定で、経常利益は前期比173%と大幅増を見込んでいる。

狙いは顧客生涯価値の向上

 TOTOは1998年に、「コンタクト21」と呼ぶ販売戦略を打ち出した。これは「生涯、TOTO商品をご愛用いただく」という理念を柱としたもので、「顧客生涯価値」の向上を目指す戦略だ。

 市場環境が厳しい現在、顧客生涯価値の向上に努める企業は多い。しかし、製造業、なかでも消費者との接点がないような企業にとっては、これは容易なことではない。

 TOTOでも、この問題への対処が課題になっていた。消費者に対する営業・販促活動を強化しないと、収益の拡大は期待できない。とはいえ、TOTOは一部の関連会社しか自前の顧客接点を持たない。

 そこで、消費者との関係を強化し、生涯価値を高めようとコンタクト21を打ち出したのである。

 コンタクト21の骨子は、TOTOの商品を購入した顧客に対するサービスを強化し、自社および販売代理店や施工業者の売り上げにつなげること。具体的には、補修などのアフターサービスを強化し、その後の商品の買い替えといった需要を取り込んでいく。最終的に、リフォームの注文を獲得することを狙う。

 すなわち、既存の顧客に対して「(1)アフターサービス→(2)商品買い替え→(3)リフォーム」というサイクルを繰り返し、生涯価値を高めることがコンタクト21の狙いだ。このサイクルにおいて、実際に顧客と対応する拠点が、「水まわりのコンビニ」というわけである。

ネットで工務店の業務を支援

 TOTOにおける商品の流れは、次のような工程をたどる。まずは同社が、建材卸やガス器具販売会社などの販売代理店に商品を納入。販売代理店は、工務店やリフォーム専門会社などの施工業者に商品を販売する。その後、施工業者がTOTOの商品を使って、消費者の要望に沿ったトイレやバスルームを作り上げる。

 新築住宅市場が右肩上がりのときは、販売代理店に対する営業活動を重視していればよかった。販売代理店で長期の欠品を起こさなければ、業界トップであるTOTOのブランド力によって、自然と業績が伸びたからだ。

 しかし、新築住宅市場が頭打ちになった現在では、そうはいかない。そこで、外部の企業に消費者との接点を担ってもらう戦略が必要になったのである。

 その拠点である「水まわりのコンビニ」は、販売代理店と施工業者のなかから選ぶ。店舗に顧客対応の物理的なスペースと人員の余裕があるところに「水彩ショップ」という称号を与え、水まわりのコンビニと位置付ける。

 水彩ショップには、大きく2種類の店舗がある。主に販売代理店を基にした「水彩プラザ」と、主に施工業者を基にした「水彩工房」である。水彩プラザは補修品の販売、水彩工房はリフォームをそれぞれ得意分野にする。このほか、TOTOの子会社で保守を担当するTOTOメンテナンス(本社東京)の店舗も「水彩生活」として、水彩ショップに加わっている。

 「水まわりで困ったことがあったら『水彩ショップ』に」という意識を消費者に植え付ける一種のブランド戦略といえる。これによって、TOTO以外の商品を使っている部分も含めて、すべての水まわりでリフォームが必要になった際に水彩ショップを訪れることが期待できる。水彩ショップの店舗数は2003年9月末時点で284店。これを2005年3月までに400店に拡大する。

 水彩ショップにおける顧客対応を支援する仕組みも用意している。99年4月に開設したウェブ・サイト「COM-ET(コメット)」である。このサイトを通して、施工業者における見積書作成や図面作成を支援する機能や、トラブル対策を提供する。

長谷川 博 hhasegaw@nikkeibp.co.jp