搭乗率よりも売り上げ最大化を目指す
 全日本空輸は10月をメドに、国内線を対象に1便当たりの売り上げを最大にするために、最適な座席配分や運賃を自動的に決定するシステムを導入する。従来、旅客数の需要予測は各路線の担当者が前年の旅客実績を基に、経験と勘に基づいて行っていた。

 だが、国内線だけで約800便ある需要予測を20人の担当者で行っているため、作業量が限界を超えていた。早急に業務の効率化が求められていた。

 新システムでは、早朝便など需要の低い便を中心に8割の便に関して、8割引など各種運賃の座席配分を自動化し、担当者を需要の高い便の動きに集中させる。

 「高い需要が期待できる便は、システムの予測が外れると影響が大きい。そのため、担当者が必要に応じて手動で修正する必要がある」(営業推進本部マーケティング室営業システム部マーケティング機能開発グループの荒牧秀知主席部員)からだ。

 これにより、「予約では満席だったが出発間際に空席が発生する」といった販売機会の損失を防ぎ、市場に座席を提供し売り上げを向上できるよう座席管理に集中させる。

 「システムを導入する前に、まず業務改革が必要だった。担当者は座席を管理することから、いかに収益を向上できるかを考える役割に変わる」(荒牧主席部員)という。投資額は、同時に導入するダイヤ編成に併せて最適な規模の航空機を割り振る「機材最適化システム」と合わせて13億円。2004年までに150億円の増収効果を見込む。

40回修正を加えて精度を上げる

 先行して昨年4月から導入した国際線(貨物便を除く)では、7割の便を自動化し2002年度は30億円の増収効果があった。

 新システムではまず、過去2年間の日別・便別・座席クラス別の旅客数を基に需要を予測する。サッカーW杯などのイベントで需要が急変していたデータは、担当者が補正する。エコノミークラスでは、普通運賃や割引運賃などを販売価格帯によって10種類に細分化。各運賃に何席設定するかは、運賃と予約が入る確率をかけ合わせた収益の期待値から算出する。

 実際に搭乗する人数の予測を、出発日の1年前から前日までに合計40回繰り返すことで精度を上げる。各時点での残席数で計算するため、そのつど予約が入る確率も変更する。

 国内線の運賃競争は、年々加速している。加えて、イラク戦争や重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響など、航空業界を取り巻く環境は非常に厳しい。

 同様のシステムは、世界的な航空連合「スターアライアンス」に加盟する、全日空を含む9社が採用し、日本航空は独自に構築している。ちなみにスターアライアンス加盟のシンガポール航空は、2000年12月から導入している。全日空としては、利益重視の体制に切り替えることにより、少しでも収益を改善したい考えだ。

西 雄大tnishi@nikkeibp.co.jp