明治乳業は2月から、牛乳やヨーグルトといった商品のトレーサビリティー(生産履歴の追跡)システムの導入を本格化した。出荷日や出荷先といった情報を基に、商品の製造ラインや原料となった生乳の保管タンクを迅速に特定できる体制を構築。商品回収や原因の分析を迅速にして、被害の拡大を防ぐ。

 新システムは、「MES」という製造管理システムと、「冷蔵庫システム」という出荷管理システムで構成。2つのシステムを連結し、生産データや出荷データを一元管理する。工場1カ所当たりの導入費は、MESが数億円、冷蔵庫システムが5000万円になる見込み。

 すでに、全国18工場のうち、MESは2カ所、冷蔵庫システムは5カ所で稼働しているが、2006年までに対象を全国18工場に拡大する。これによって、工場の従業員は日報で生産情報や出荷情報を管理する必要がなくなる。

 商品の中身や包装パックに不備があれば、製造時間と製造ラインが同じ商品に不良品が交ざっている可能性が高い。出荷先で不良品が見つかった場合、新システムを使って、過去の出荷データを基に不良品の製造時間や製造ラインなどを特定。その後、同じ条件で製造された商品の回収を進める。

 昨年1月、雪印食品(昨年4月に解散)の牛肉偽装事件が発生して以来、食品の安全に対する消費者の意識が高まっている。明治乳業は今回の試みによって、消費者からの信頼強化を狙う。

長谷川 博 hhasegaw@nikkeibp.co.jp