ヤクルトは2005年3月までに、全国に136ある販売会社に、GIS(地理情報システム)と携帯情報端末を組み合わせた顧客情報システムを導入していく。各販売会社がそれぞれ抱える最低1つの販売拠点で新システムを使えるようにする。

 すでに11の販売会社でシステムの検証を始めており、400人が携帯情報端末を利用している。全2800拠点に利用が広がれば、約5万1000人の販売員が携帯情報端末を使うことになる。

 新システムは、販売会社の本部に置く顧客データベースと販売拠点のGIS、販売員が持つ携帯情報端末を連携させる構成をとる。データベースには、同社の乳製品を購入している顧客に関する情報を蓄積。地図画面から顧客を指定して情報を確認できる。

 ヤクルトレディーと呼ばれる販売員は顧客データベースからいつでも、各自の携帯情報端末に顧客情報を引き出せる。毎日帰社後に、その日の販売実績を顧客データベースに蓄積することになっているので、翌週の同じ曜日には前週に訪問した顧客の順番通りに顧客情報と販売商品情報、数量などを携帯情報端末に格納できる。しかもGISを見れば、訪問先の正確な位置や訪問経路を簡単に確認可能だ。

顧客の固定化が最大の目的

 ヤクルトでは、販売員が休暇を取ったり、退職するときの顧客の引き継ぎが大きな課題になっていた。新システムは、販売員の間で顧客情報を引き継げるようにするものだ。

 「来週は購入を控えたい」「次は何時に来てほしい」「春まで購入を休みたい」といった顧客と担当販売員の約束ごとを、顧客データベースを通じて他の販売員にも知ってもらうことで、顧客情報の引き継ぎ精度を高める。これにより、顧客の固定化に努める。

 これまでは販売員が各自のやり方で顧客情報を管理していたため、引き継ぎの際に漏れが出てしまい、顧客が離れてしまう場面もあったという。そこで今後は、顧客との約束ごとを逐一顧客データベースに蓄積してもらう。

 「休暇を取った販売員の代わりの人が顧客との約束ごとを守れないと、顧客からクレームが来る。苦情はその顧客を担当している販売員に来ることを誰もが知っているので、約束ごとの入力には前向きに取り組んでもらえる」(岩井久・宅配事業部部長)。

手書き入力にこだわる

 同社が採用した携帯情報端末は、シャープのザウルス。コンピュータに不慣れな販売員でも操作できるように日本語の手書き入力にこだわった結果、ザウルスを選択したという。手書きしたメモは顧客データベースにそのまま蓄積される。

GISと携帯情報端末向けのソフトは独自開発で、費用は3億3000万円。

川又 英紀 hkawamata@nikkeibp.co.jp