松下電器が実施した逆オークションの成果
 松下電器産業は、インターネットを活用した逆オークション方式の資材調達に取り組んでいる。昨年4月から連結各社を巻き込んで行っている「調達革新」の一環。すでに昨年は4品目について計4回実施し、AV端子板(テレビなどの接続端子に使う部品)の場合で調達価格を約40%削減するといった成果を上げている。2003年度は月1回程度に拡大する方針だ。

新規取引先が半数を占める

 逆オークションは、売り手が価格を随時競って、最後に一番安い価格を提示した売り手が受注できる取引方式。松下電器は価格引き下げ以外に、新規購入取引先の開拓も狙う。今回、入札した延べ81社のうち、約半数が新規取引先。受注した取引先も7割程度が新規だった。

 「日本の取引先では、担当者に価格決定の権限がなく、機動的に入札できない傾向があった。一方中国の取引先は、担当者の権限を明確にするなど、用意周到だった」(資材調達本部企画チームの京極照彦チームリーダー)。

 AV端子板では、まず全社統一仕様を決め、それに対する注文を資材調達本部に集約した。「部門横断で標準化するには、設計のときなどに妥協が必要。そのデメリットを補うだけの安い価格になるかどうかを検証するのも今回の狙いだ」(同)。

難題山積の調達革新

 今回の調達革新では、並行してコイルなどの電子デバイスの取引を資材調達本部に集約する取り組みも実施している。前年度に1000億円程度だった対象品目の購入額が、2002年度には約20%下がる見込みだ。

 ただし、松下電器の購入取引先は国内で約6000社に及び、うち半数は年間取引額が1000万円以内。しかも事業部や分社ごとに価格が違うケースも多く、改革は容易ではない。

 今回逆オークションで取引したのは約50億円。松下電器の調達額(全世界、連結で約3兆円)のうちごくわずかだが、「コスト削減効果を見せることで革新を進める」(同)ためには重要な取り組みだろう。

 逆オークションは米E2openのネット取引所で実施。インターネットに接続した普通のパソコンから入札できる。

清嶋直樹 nkiyoshi@nikkeibp.co.jp