ドトールコーヒーは、今年2~5月に実施した来年度の新卒採用において、インターネット上でビジネス資質を評価する取り組みを導入した。ビジネスリーダーの資質を持つ人材を採用するのが狙いだ。

 ネット上で学力や適性などを診断する「e採用」を進める企業が増えているが、あくまで応募者を数分の1に絞り込む「選択+消去」型ツールとして使うのが一般的だ。オンラインで求めるタイプの人間を特定して、直ちに個別にアプローチする「選抜+スカウト」型の運用体制は珍しい。

採用業務を効率化

 ドトールがこのような取り組みを始めた背景には、新業態や新商品の開発を積極的に推進していることがある。「従来の採用プロセスで、リーダーに育つ人材を的確に選考できているのか」(稲森六郎・取締役総務人事部長)という疑問があったためだ。

 例年、会社説明会などの応募は就職情報サイトを通じて受け付けていたが、その後は会社説明会を60回も開いて各種検査や面接を実施していた。しかし、「資質を見抜けない人まで面接官を担当してしまうのが実情。従来のペーパーテストの適性検査もあてにしづらい」(稲森取締役)。

 ビジネス資質の評価には、人材コンサルティング会社のプロモーション(本社東京)が開発した「ESP(The Evaluation of Star Performance)診断システム」という評価手法を採用。この手法は、大手複数企業の会社を代表する現役ビジネスリーダーの行動・思考パターンをひも解き、それをデータベース化して開発したものという。80の設問(10~15分)で「ビジネスポテンシャル」と「ビジネスセンス」の偏差値を市場価値と比較して算出し、「商売勘」や「人間的魅力」といったビジネスリテラシーの12因子を点数化することが特徴だ。

 ドトールコーヒーは、採用試験への適用に先立ち、社員を対象にテストを実施。社内の中核的な人材と点数との相関度は高かったという。

 そこで、今年2月の受け付け時に、応募者にESP診断を受けてもらった。診断結果の上位約100人に対して人事課長が1次面接を実施。3月中に最終面接を行った。例年よりも面接を1段階省略し、1カ月以上早く最終面接にたどり着いた。採用予定数に足りない人数分は、次候補から従来通りの面接を実施した。最終的に2万人強の応募学生から79人を採用した。

面接・研修中から手応え

 稲森取締役は、面接段階からESP評価に手応えを感じたという。履歴書や面接時の自己アピールに、「自分で商売をしていた」「アルバイト先の焼肉屋でBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)のイメージ回復のチラシを自分作って配り、売上を元に戻した」など、自立性や主体性を感じさせるエピソードが多かったからだ。

 現在実施中の入社前研修でも、「ミーティングで議長を決める前から、議長席の奪い合いが起きる」(稲森取締役)といったように積極的な行動が目立つという。

井上健太郎 kinoue@nikkeibp.co.jp

お詫びと訂正
2002年10月号に掲載した記事では、ドトールコーヒーが採用した手法を「EQ(心の知能指数)評価」と表現しましたが、正しくはプロモーション(本社東京)が独自に開発した「ESP診断システム」の誤りでした。この記事ではEQと表現した部分をESPと修正してあります。お詫びして訂正いたします。