牛肉の生産・流通履歴を管理
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 農林水産省のBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)対策である牛肉の「トレーサビリティ(生産・流通プロセスの事後追跡)」が、法制化される見通しだ。同省生産局畜産部食肉鶏卵課は5月28日、「国産牛肉生産情報提供モデル事業」の第1回検討会を開き、小売業者や消費者団体などに草案を示した。同省は、今夏に試験実施に踏み切る考えだ。

 来年までに法制化される見通しで、小売業者はこの制度に対応した体制を構築する必要がある。ある程度の取扱量を持つ企業では、新たな情報システムの構築に迫られそうだ。

牛の個体を食肉流通まで追跡

 トレーサビリティは、牛肉の個体情報を消費者に提供する仕組みである。草案によれば、情報の流れは以下のようになる。

 (1)生産者は牛の耳に個体識別番号票を付け、独立行政法人の家畜改良センターが「識別番号、品種、飼養地、家畜市場/取引年月日、と畜場/と畜年月日」などをデータベース化。(2)と畜場や食肉加工場は、解体した肉に個体識別番号をひも付けて小売業者に卸す。(3)小売業者は、商品ごとに原産地や個体識別番号、問い合わせ先などを明示する。

 小売業者は、電話やホームページを通して、牛の育成地や流通経路、可能であれば飼料や病歴の情報を消費者に提供しなければならない。

IT活用の具体策は今後の課題

 こうした複数の業者の手を渡る流通段階の情報管理は、煩雑になる懸念がある。生体に割り振られた識別番号を、食肉として加工した段階まで一貫して管理する必要があるからだ。実際、第1回の検討会でも「ミンチ肉は個体レベルの管理は難しい」といった意見が出た。

 検討会では、情報システム面の検討は未着手だ。IT(情報技術)投資の体力がない中小の業者に対して、具体的なシステム支援策が必要になるだろう。同省へIT活用の提案を準備しているベンチャー企業のエフメディア(本社東京)は、「携帯電話を使った安価な無線バーコード読み取り装置や、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)形式のサービスを使うのが現実的だろう」(新堂太郎取締役)と指摘している。

井上 健太郎 kinoue@nikkeibp.co.jp