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 本田技研工業(ホンダ)は、国内の主要な部品メーカー370社との間で、SCM(サプライチェーン・マネジメント)を促進する新しいEDI(電子データ交換)システムを開発し、本格的な展開を始めている。

 1次部品メーカーを対象にした、既存のEDI専用システムと専用回線網を廃止。2001年10月にパソコンとIP-VPN(仮想閉域網)を使ったシステムに置き換え、部品メーカーが低コストでEDIを利用できる環境を整えた。「部品メーカーは4割程度コストを削減できる」(IT部IT企画室の本間康夫情報システム主幹)としている。

 ホンダは新システムによって、EDIを導入する部品メーカーを増やすことで、部品の発注から調達までのリードタイムの短縮につなげる考え。

部品メーカーの情報化を促す

 これまでホンダと取引する部品メーカーは、EDI専用システムを導入すると同時に、専用回線を自前で用意する必要があった。

 しかも、ホンダのシステムは「見積もり」、「生産計画」、「発注」、「設計」といった具合に部門ごとに分散しており、専用回線を3本以上用意していた部品メーカーもあったほどだ。

 ホンダが開発した新EDIシステム「IMPACT-III」は、分散していたシステムの窓口を統合するとともに、インターネットの技術を使って、簡単に利用できるようにしたのが特徴。

 具体的には、ホンダの部門ごとのシステムに連動するポータル・サイトを開設。部品メーカーがウェブ・ブラウザからそのサイトにアクセスすると、見積もりから部品の受発注、設計データに至るまでの取引に必要な情報をやり取りできるようにした。

 部品メーカーは、ウェブを閲覧できるパソコンを用意し、自動車業界共通ネットワークである「JNX」に加入するだけで済む。しかも、通信回線を1本に集約できるため、コスト削減に結びつく。

 ホンダは1次部品メーカー約480社と取引しており、12月中旬時点でそのうちの約80%がIMPACT-IIIを導入している。「今後は情報化が遅れている2次や3次メーカーも視野に入れて、普及活動を続けていく方針」(本間主幹)。

業界標準を取り入れ取引先増やす

 ホンダが新システムを導入した背景には、系列にとらわれない新規の取引先を見つけたいという狙いもある。これまで取引がなかった優秀な系列外の部品メーカーと新たに取引するには、専用EDIシステムの存在が阻害要因になりかねない。

 そのため、IMPACT-IIIは積極的に業界標準仕様を採り入れた。トヨタ自動車や日産自動車、マツダなど数多くの企業が参画しているJNXに始まり、国際標準EDIデータ形式のUN/EDIFACT、発注書や納品書などについては日本自動車工業会が指定している帳票形式を採用した。

渡辺 一正 kwatanab@nikkeibp.co.jp