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 シャープは、携帯電話を活用した営業支援システムを導入した。営業担当者が持つiモードなどの携帯電話から専用サイトにアクセスし、外出先で商品の在庫状況や価格、売り上げの予算と実績データなどを簡単に閲覧したり、受注データを入力できることが特徴だ。

 営業担当者は顧客先で商品を受注する際に、その場で在庫状況を確認するため、電話でオフィスに問い合わせるケースが少なくない。すでに、ノートパソコンを使った営業支援システムを稼働させているが、実際にはあまり利用されていなかった。パソコンを立ち上げて携帯電話を接続するといった一連の作業に時間がかかることが原因である。

 新たに「携帯電話基幹業務連携システム」が稼働してからは、在庫などを問い合わせる電話が激減。「システムを導入した家電部門では、通信コストが3分の1になった。さらにオフィスにおける事務作業の中断がなくなるなど副次的な効果も大きい」(国内営業本部・IT推進室の古城修副参事)。

 今年4月からシステムの展開を開始して、すでに約1000人の営業担当者が利用している。今後はシステムを改良して、ほかの営業部門やグループ企業にも展開していく方針である。システムに対する投資額は約1000万円。

セキュリティ配慮し結果をメール配信

 このシステムを使って在庫状況などを調べるには、まず携帯電話から専用サイトにアクセスして、個人ID(識別符号)とパスワードを入力。さらに検索項目や条件を指定すると、利用者の携帯電話あてに、あえて電子メールで検索結果を返信する仕組みを採用している。

 通常のiモード・サイトのように、商品の在庫状況などを一覧できるページを設けると、IDやパスワードが漏えいした際に、悪用されかねない点を考慮したためだ。

 「パソコンと違って携帯電話は、そもそも情報セキュリティが考慮されていないが、携帯性や利便性には優れている。そこで、携帯電話の弱点を補うために、こうしたセキュリティ対策を採った」(システム企画推進部の小西克幸副参事)。

 電子メールによる返信でも、数十秒から1分程度で回答が得られるため、実用上の問題はないという。

基幹システムからデータを抽出

 売り上げ実績や在庫状況といったデータは基幹システムで処理しており、これを携帯電話に表示させるため、ロータス(本社東京)のドミノ フォンコネクトというゲートウエイ・ソフトを利用した。

 基幹システムから一定のタイミングでデータを取り込み、ドミノのデータベースを更新。検索結果を、送信する相手の携帯電話に合致したデータに整える。

安倍俊廣 toshiabe@nikkeibp.co.jp

記者の視点: iモードなどを使ったシステムは増えているが、IDとパスワードだけではセキュリティ対策としては不十分。この事例のように電子メールを併用する方法は、単純だが効果は高い。営業支援以外にも応用できそうだ。