住宅メーカー大手の住友林業は約2億円を投じて、iモード対応の携帯電話を使った建築工事の工程管理システムを構築した。

 全国に約4000カ所ある建築現場ごとの進ちょく状況を、現場の責任者がiモードで毎日入力する。進ちょくを日次で管理することで、ジャスト・イン・タイムによる建築資材の搬入と作業員の確保を狙う。これにより、平均110日かかっている一棟当たりの工期を10日短縮するとともに、建築コストを5%削減できるという。

 従来は、現場ごとの進ちょく状況を大まかにしか把握できていなかった。そのため、建材が現場で必要になる日の直前になって納入業者に発注することが多く、納入業者は在庫や配送の計画を立てにくかった。

 これが「建材の調達コストをふくらませ、工期が長引く原因になっていた」(伊青孝明・住宅本部技術生産部次長)。特に問題なのは建材の配送コストで、現状では一棟当たりの建築費の10数%を占めている。

 同様の問題は、水道や電気などの専門工事業者が作業員や機材を手配する場面においても生じていた。

 新システムは、6月に東京と大阪、愛知、福岡にある一部の建築現場で適用し始めた。今後、工事を委託している工務店の協力を得ながら順次、対象を広げていく。来年4月にも、全国の現場に展開する計画だ。

全現場の工事手順を標準化

 従来、住友林業が工事の進ちょく状況を日次で把握できなかったのは、施工管理と実際の工事を工務店に委託しているからだ。住友林業は住宅の品質を維持するために施工の監査役に徹しており、その担当者が現場に足を運ぶのは数日おきに過ぎない。

 工務店の現場責任者がiモードを使って入力した工事の進ちょく状況は、インターネットを通じて、建材の納入業者や専門工事業者に公開する。

 同時に、これまで現場ごとにバラバラだった住宅建築の工事手順を標準化した。標準化しないと、進ちょくを把握できても、次にどの部分の工事を進めるのか分からないからだ。

 そのために、工程計画をパソコンで半自動的に作成できるシステムを工務店に導入した。工務店は、住友林業から受け取った設計図を見ながら、間取りなどの条件を入力すれば、施工予定表を作成できる仕組み。その情報は、インターネットを通じて住友林業のシステムに取り込まれる。

 このシステムを使えば、工務店も各現場における工事の進ちょくを一手に把握できる。そのために、進ちょくに応じて毎月、住友林業に工事代金を請求する業務を効率化できる。この利点により、「工務店は新システムの利用に意欲的」(伊青次長)という。

暗号技術使いセキュリティを確保

 新システムは、関連会社の住友林業情報システム(本社千葉市)が開発した。インターネット上でのセキュリティを確保するために、暗号技術を利用した通信サービスなどを採用した。

中山秀夫 hnakayam@nikkeibp.co.jp

記者の視点:建築現場は屋外、中小企業、熟年労働者という情報化が進まない条件がそろっている。ネット対応の携帯電話を使い、当事者にメリットを提供すれば、そうした条件でも情報化を推進できることに注目したい。