製造から販売までのモノの流れを一貫して把握し、関与する企業間で情報を共有して全体の経営効率を向上させる手法。在庫や販売機会ロスの削減などが期待できる。

 商品を生産し、卸や小売りなどの流通を経由して顧客に届けるまでのモノの流れを「サプライチェーン」と呼びます。「SCM(サプライチェーン・マネジメント)」は、サプライチェーンを構成する様々な企業が、生産や在庫、購買、販売などの情報をリアルタイムで共有することによって、共同で経営効率を高めていこうという取り組みです。

 サプライチェーンを構成する企業はそれぞれ、異なる利害を有しています。例えば、モノを作るメーカーは工場を安定稼働させて製造原価を下げることを追求しますし、卸や小売業者は売れ筋だけをできるだけ安く、早く、大量に確保することを追求します。

 しかし、市場が大量生産・大量消費から多品種少量消費に変わった現在、企業がそれぞれの利害にこだわった「部分最適」を追求しても限界があります。全体最適による効率向上が必要なのです。

◆効果
在庫と販売機会ロスを同時に削減

 このため、1990年代初めごろから、メーカー、部品や資材などの納入業者、そして流通業者が個々の利害を超えて、共同で在庫の削減や納期短縮、販売機会ロスの削減、キャッシュフローの向上を目指す事例が増えてきました。最前線の販売情報を素早く企業間で共有して、売れそうな商品を迅速に追加生産したり、不良在庫の発生を抑えようというものです。在庫を削減すると同時に、欠品による機会ロスも抑えるという相反する目標を同時に追求したのです。

 しかし、既存のSCMへの取り組みには弱点もありました。2001年、いわゆる「ITバブル」が崩壊したとき、SCMを実践していたはずのIT関連企業が膨大な不良在庫を抱える例が相次いだのです。販売状況は各社で共有していたものの、欠品を嫌って各社が多めの需要予測と発注を繰り返し、それが積み重なってしまったことがあります。

 こうしたことから、SCMには新しい発展形も出てきています。例えば「CPFR」(Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment)と呼ぶ手法は、メーカーと小売りが需要予測したそれぞれの結果をすり合わせることで、より現実的なものにするやり方です。

◆事例
デルは在庫3日に

 シャープは、生産計画と部品調達のプロセスを見直すことで、98年末に2.37カ月あった製品在庫回転日数を、2001年末までに0.99カ月に圧縮しました。

 米国ではデルコンピュータの事例が有名です。顧客からの受注データを部品メーカーや、物流業務を委託しているフェデラル エクスプレス(フェデックス)と即座に共有し、在庫回転日数を3.1日と、まさに“生鮮品並み”にまで縮めています。

秋山 知子 takiyama@nikkeibp.co.jp