KDDIは,発足後最初の平日となる10月2日,新会社の本社機能を置く東京・新宿の旧KDD本社ビルで除幕式と記者会見を行った。記者会見で奥山雄材KDDI社長は,「我々はNTTに対するチャレンジャーである。日本テレコムは眼中にない」と宣言した。

 さらに奥山社長は,「85年の通信自由化後,(DDIがNTTに対抗して)市外通話料を引き下げたのと同様に,今後はモバイルとIPの料金も下げる」と,いっそうの料金低廉化への意欲を表明。携帯電話の分野でも,「2001年10月から144kビット/秒の通信サービスを提供する。同年5月に高速サービスを開始するNTTドコモには遅れるものの,エリア展開を急いで優位に立つ」(奥山社長)との戦略を明らかにした。ただし携帯電話では,NTTドコモと日本テレコム・グループがシェアを拡大している中,KDDIグループだけがシェアを落としているのが実情。当面は,厳しい戦いを強いられそうそうだ。

 新事業に関しては,ITS(intelligent transport systems)分野に力を入れるとした。ITSは道路交通システムの情報化のこと。「ITSは,NTTがまだ本腰を入れていない分野。(主要株主である)トヨタ自動車の支援を受けて積極的に事業を推進する」(奥山社長)と,NTTが本格参入する前に主導権を握りたい考えである。

 KDDIは,DDI,KDD,日本移動通信(IDO)の3社が合併して10月1日に誕生した新会社。傘下には携帯電話やPHS事業者を抱え,グループの年間売上高は3兆円以上(2001年3月期決算の予想)を見込む。日本テレコム・グループの1兆4000億円(同)を引き離し,10兆8000億円(同)のNTTグループに挑む。

(吉野 次郎=日経コミュニケーション)