郵政省の電気通信審議会(電通審)は9月28日,NTTやDDI,日本テレコムなど主要通信事業者首脳から,競争政策の在り方などについて意見を聴取した。電通審は7月からNTT法や電気通信事業法の見直し作業を進めており,2年後に結論を出す予定である。

 議論の大枠を決める今回の聞き取り調査でNTTは,「持ち株会社を頂点とする現行のグループ体制を維持したままNTT法を廃止して,完全民営化することが最終目標」(宮津純一郎NTT社長)との考えを明らかにした。NTT法は政府の持ち株比率や新株発行,役員人事,事業計画などを規制している。宮津NTT社長は,「即決しなければならない場面で認可が必要だったりする。迷惑じゃないが,何とかして欲しい」と,強く見直しを求めた。

 またグループ体制の維持を基本的な考えとしたことで,DDIや日本テレコムが要求するNTTグループの完全分割をけん制した。東西のNTT地域会社の合併については,「以前そういうことを口走ったが,今回は忘れてほしい」(宮津NTT社長)と要求を撤回。合併要求に競合事業者が反発し,完全分割論議の呼び水になることを恐れたようだ。

 さらにNTT地域会社の業務範囲拡大に関して,NTT西日本の浅田和男社長は「NTTの業務は地域通信に限定されているが,インターネットは地域通信や長距離通信といった分け方ができない。インターネット事業に進出したい」と意欲を示した。ただ,NTTグループによるインターネット接続サービスの独占につながるとして,競合事業者の反発は必至である。

 競合事業者は「競争を促進するために,市場支配力に着目した規制の導入が必要」(日本テレコムの村上春雄社長)とし,"巨人"NTTに対する規制の強化を求めた。ただ一方で,「全国の家庭に光ファイバを引き込むのは,資金力があるNTTにしかできない」(DDIの奥山雄材社長),「整備した光ファイバ網は,我々に開放してほしい」(日本テレコムの村上社長)と,NTTに依存する姿勢も見せた。

(吉野 次郎=日経コミュニケーション)