図1 A社はADSLを導入したところセンター側の回線がボトルネックになってレスポンスが極端に低下
ADSL導入によりセキュリティが甘くなったため,パソコン起動時にセンターのサーバーからソフト情報をダウンロードするようにした。ところがパケット廃棄が頻発し,レスポンスが極端に低下した。

一斉ダウンロードでレスポンス低下

 ところがシステム変更早々,各拠点から「レスポンスが悪い」,「センターにアクセスできない」といったクレームが殺到。クレームは,各拠点が業務を開始する午前9時以降に集中して発生していた(図1[拡大表示])。

 午前9時の業務開始時の通信状況を解析すると,TCPの再送が多発していることが判明。センターから拠点方向でパケット・ロスが多発していた。

 理由はすぐに分かった。朝,拠点のパソコンを起動した時点で,ソフトのバージョン情報など大量のデータがセンターからダウンロードされるためだ。センターと接続しているインターネット接続事業者(プロバイダ)の回線容量を超えるトラフィックが発生したため,「ルーターがパケットを廃棄,サーバーがパケットを再送」という悪循環に陥っていた。

図2 A社は帯域管理装置およびグループウエアのAPIを変更することでレスポンス低下を解決
最初に帯域管理装置を導入。スループットは改善したが,グループウエア・クライアントのレスポンスは悪いままだった。そこでグループウエアのAPIをMAPIからWebアクセスに変更した。
 そこでA社は,センター拠点に帯域管理装置を導入することを決定。まず,プロバイダにつながる回線のスループットを測定し,帯域管理装置に測定したスループットを設定。センターからプロバイダに向かうトラフィックを,スループットに合わせた(図2[拡大表示])。これにより,業務開始直後の極端なレスポンス低下は解消された。

グループウエアのAPIも変更

 ただ,グループウエアのクライアントだけは,「通常業務中でもレスポンスが悪い」という苦情が続いた。A社のグループウエアは,LANでの使用を前提に設定されていた。

 グループウエアのクライアントは,MAPIを使っていた。MAPIは小さなパケットでやり取りするため,総パケット量が多くなる。各パケットはそれぞれ,網内遅延分だけ遅れて相手に到達。トータルの応答時間が極端に増えてしまっていたのだ(図2[拡大表示])。

 A社のグループウエアでは,MAPI以外に「汎用POP/IMAP」,「Webアクセス」を利用できる。A社は,MAPIの使用を中止し,サーバーの設定を「Webアクセス」に変更。クライアントにはWebブラウザを使うようにした。

 これにより,レスポンスに対するクレームは完全になくなった。