低料金ながら広い帯域を使えるのがADSL(asymmetric digital subscriber line)の特徴である。だが,ただ導入しただけでは,十分なスループットが得られないケースもある。帯域管理装置を使ったり,使用する最大フレーム長を調整するなど,スループットを引き出すには工夫が必要だ。

 拠点間を結ぶ手段として,ADSLとインターネットVPNを組み合わせて使う企業が増えている。フレーム・リレーやISDNに比べて,帯域当たりのコストは断然低い。

 ただ,帯域が広いからといってトラフィックの流しすぎには要注意。帯域管理装置などでトラフィックの制御が必要になるケースもある。

 また,VPNのヘッダーが付くことで,パケットのサイズが長くなることにも注意しなければならない。

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帯域管理で応答性を確保

センターで拠点のパソコンのソフトを一元管理すると,一斉にトラフィックが流れる。帯域管理装置を使ったトラフィック制御が必要である。

 A社は,全国に小さな支店や営業所を分散配置している化学薬品メーカー。従来フレーム・リレーでこれらの小規模拠点の間を接続していたが,「センター拠点のサーバーのレスポンスが悪い」というエンドユーザーのクレームが増えてきたため,フレーム・リレーの使用を中止。ADSLとインターネットVPNを使って拠点間を結ぶ方法に切り替えた。

 新ネットワーク構築後,小拠点の環境は劇的に改善した。フレーム・リレー使用時の拠点側の回線速度は,64k~128kビット/秒。それに対して,ADSLは1.5Mビット/秒である。さらに,従来はセンター拠点を経由してインターネットに接続していたが,新環境では拠点からインターネットにダイレクトに接続。インターネット向けのトラフィックと,センター拠点との通信が分散されるようになった。

 しかし拠点からインターネットに直接つながるため,セキュリティが甘くなった。拠点のユーザーが,インターネットから好き勝手にソフトウエアやパッチ(修正プログラム)をダウンロードするようになったからだ。そこでA社は,拠点側のパソコンのソフトウエアをセンターのデスクトップ管理サーバーで一元管理することにした。

 パソコン起動時に,センターからソフトウエア一覧やバージョン情報をダウンロード。ソフト更新の必要があれば,該当する新ソフトを自動的にインストールするという仕組みである。