森 浩徳氏 日本ヒューレット・パッカード コンサルティング統括本部 テクノロジーソリューション本部 ネットワークソリューション部 部長
大久保 敦氏 日本ヒューレット・パッカード システム統括本部 ネットワークシステム本部 西日本ネットワークシステム部

インターネット上に共有サーバーや公開Webサーバーを設置する際に,回線コストを重視してADSLを使うケースがある。ここで気をつけたいのは,WAN接続用ルーターに設定するIPアドレスの扱いだ。また,いくら手軽にWebサイトを公開できるとはいえ,セキュリティ面には十分に注意を払う必要がある。

 期間限定で使う開発用のサーバーを複数拠点間で共有する場合,ADSLは有効な通信手段である。例えば,高い専門スキルを持つ個人開発者にも参加してもらいやすい。手持ちの電話回線を活用し,安価な通信機器を使って常時接続ができるからだ。

 ただし,共同開発用サーバーに接続するルーターのグローバルIPアドレスの運用には注意が要る。多くのインターネット接続事業者(プロバイダ)はアドレスを動的に割り当てるため,ルーターを識別する手段が必要になる。

安さで動的アドレスを採用
突然サーバーへ接続不能に

ADSL回線につなぐ場合でも,「固定アドレスを使わない」選択肢がある。ダイナミックDNSを使うと,動的アドレスの運用の手間を省ける。

 計測システムを開発するA社は,専門性の高い開発業務を短期間で遂行するため,外部との協業を進めている。A社の売り物は,短納期と柔軟さ。競争力の一層の強化を狙い,開発委託先と成果物を共有する目的で共同開発用サーバーを構築することにした。

 インターネットへの常時接続回線には,安価なADSLを採用。複数の委託先から安全性が高い接続を実現するため,Telnetやファイル転送など機能ごとにパスワードを設定できるSSHを用いることにした。

SSHでセキュリティを確保

 A社は委託先と共同で使うサーバーを,本社に設置した。ADSLモデムに接続するルーターには,プロバイダからグローバルIPアドレスが動的に割り当てられる。固定アドレスを使えるメニューだと利用料が高くつくことを嫌った。固定アドレスは提供プロバイダが限られる点も,気になった。

 A社は,ルーターのポート・マッピング機能を使い,インターネット側からは開発用サーバーのSSHポートだけを使用できるように設定した。セキュリティを確保しながら,開発委託先からのTelnetセッションやファイル転送を可能にするためである。さらに,Xウインドウのアプリケーション画面も共有できるようになり,生産性は飛躍的に向上した。