大久保 敦氏 日本ヒューレット・パッカード システム統括本部 ネットワークシステム本部 西日本ネットワークシステム部
坪野 祐弘氏 日本ヒューレット・パッカード コンサルティング統括本部 テクノロジーソリューション本部 ネットワークソリューション部 第一グループ

人員の増減にはセルの増減で対応

 B社はある顧客X社で,実際にセル・デザインによるネットワークを導入した。X社が指定したシステムの納期では,3週間以内に作業に着手しないと間に合わないからだ。ADSLならばおおむね2週間以内で回線が開通するが,専用線の場合は環境構築も含めて1カ月以上かかる。

 X社のプロジェクトでは,当初の設計スタッフは10人のため,セルを2個設置。ピーク時の構築フェーズにはスタッフ数が約120人に増えたため,セルを15個設けた。この結果,プロジェクト期間を通じて,ネットワークは十分な帯域を確保できた。

図3 B社は上り回線の帯域不足から,ADSLをFTTHに切り替えた
新たなプロジェクト管理ソフトで,ADSLの上り回線の帯域不足が表面化。そこで,上り/下りの通信速度が対称型のFTTHの導入を決断した。合わせて,ネットワーク構成も以前の「ホール・デザイン」に変更した。

「ファイルのアップロードが遅い」

 次にB社は,別の顧客であるY社のプロジェクトで,ADSLを使ったセル・デザインによるネットワーク環境を構築した。Y社のプロジェクトでは,スタッフが新たな業務ソフトウエアを導入した。プロジェクト管理用ソフトを用い,全員の作業工程を管理・共有できるようにしたのだ。

 しかし,全体設計から詳細設計へとプロジェクトが進行し,スタッフ数が増えるにつれて問題が発生。プロジェクト管理ソフトの動作が鈍くなり,作業に支障を来すケースが多発した。

 B社の担当者が調査したところ,上り回線の帯域が不足し,端末で更新したファイルをサーバーにアップロードするのに時間がかかることが判明。このファイル更新が終わるまでは,ほかのユーザーはそのファイルに関連する機能を使えないことが原因だった。

FTTHでホール・デザインを採用

 そこでB社の担当者は対策を検討した。ADSLの1回線で収容するユーザー数を8未満に減らせば事態は改善できるが,費用対効果が悪い。検討の結果,B社はFTTHの導入を決断した(図3[拡大表示])。Y社の拠点はビジネス街にあり,既にFTTHサービスが2~3の通信事業者から提供されていた。納期も1~2カ月と許容できる範囲だった。

 同時に,ネットワーク構成をADSLを使ったセル・デザインから,FTTHを使ったホール・デザインに切り替えることにした。具体的には2回線のFTTHサービスを契約し,マルチホーミングを導入(図3)。現在,FTTHの月額利用料金はプロバイダ料金を含めても1万円程度と,ADSLとの価格差は2~3倍に収まる。導入の結果,全体では同等以下のコストでより快適なネットワーク環境を構築できた。