大久保 敦氏 日本ヒューレット・パッカード システム統括本部 ネットワークシステム本部 西日本ネットワークシステム部
坪野 祐弘氏 日本ヒューレット・パッカード コンサルティング統括本部 テクノロジーソリューション本部 ネットワークソリューション部 第一グループ

ISDNからの契約変更は同番移行で

 ADSL回線には,NTT東西地域会社との契約形態によって二つの選択肢がある。一つはADSL専用の「タイプ2」,もう一つは加入電話と兼用する「タイプ1」である。

 管理室の電話番号は顧客にも知らせてあり,これを変えるのは避けたい。A社は,ISDNを温存してタイプ2のADSLを導入する計画を立てた。

 ところが回線導入の直前に,東西NTTがISDNから加入電話への同番移行を発表。そこでA社はコストを重視し,多くの拠点でタイプ1回線を導入するよう計画を急きょ変更した。

 ただしタイプ1の場合,ISDNを加入電話回線に切り替えると,ADSLの開通までは電話モデムを用意しないと本社とデータ通信ができない。回線開通後は速やかにVPNルーターを設置・設定する必要があった。そこで,A社はADSL事業者と工事の日時を調整。複数の拠点で午前にADSL回線を開通させ,午後に専門業者が各ビルで一気にVPNルーターを設置することにした。

図1 A社はISDNからADSLへの移行で作業トラブルが多発
客先のビルに設けた管理室にADSL回線を導入するが,屋内工事業者に,導入回線の変更が伝わっていないことからトラブルが発生。そこで,ADSL事業者から,屋内工事業者,プロバイダまでの関係業者を洗い出し,スケジュールと工程分担を表にして共有した。

屋内工事業者に変更が伝わってない

 ところが作業当日に,いくつかの拠点で問題が発生した。VPNルーターを設置する段階で,業者から「ADSL回線が開通していない,回線の調子が悪い」といった報告が入ったのだ。しかし,A社からADSL事業者に連絡を取ると「工事は万全だ」と言う(図1[拡大表示])。

 A社の担当者が調査を進めると,それぞれのビル・オーナーが指定する屋内工事業者の一部に作業の不備があることが判明。この屋内工事業者は,ビル内のMDFからの配線や,スプリッタやモデムの設置を担当していた。

 しかし,ある拠点では工事業者に回線をタイプ2からタイプ1に変更したことが伝わらず,スプリッタが取り付けられていなかった。またタイプ2を導入した別の拠点では,MDFまではメタル回線が新設されていたが,各フロアにあるIDFまでのジャンパ配線がされていなかった。

スケジュール表を関係者で共有

 そこでA社は再発を防止するため,別のビルではA社とADSL事業者,屋内配線業者,インターネット接続事業者(プロバイダ)の間で,スケジュール表を作成。これを元に,作業工程を打ち合わせた。さらに,問題が発生した場合の連絡先を聞き,スケジュール表に盛り込んだ。次回からの導入で,スケジュール表に基づいて作業を実施したところ,トラブルは激減した。