大久保 敦氏 日本ヒューレット・パッカード システム統括本部 ネットワークシステム本部 西日本ネットワークシステム部
坪野 祐弘氏 日本ヒューレット・パッカード コンサルティング統括本部 テクノロジーソリューション本部 ネットワークソリューション部 第一グループ

小規模拠点でADSL(asymmetric digital subscriber line)を導入するときの注意点やコツを5回連続で紹介する。専用線より低料金で納期が短いADSLは,中小拠点の接続や臨時の回線として利用でき,回線の増減もしやすい。ただし開通には多数の事業者がかかわるため,周到な準備が必要だ。

 ADSLの魅力は,圧倒的な費用対効果の高さ。インターネットVPNのアクセス回線として利用しても,最大8Mビット/秒の回線で,1Mビット/秒程度の実効速度を期待できる。回線の納期も専用線などに比べて短い。

 このため,小規模拠点や,臨時に設けた拠点を結ぶ手段として最適である。しかし,“手軽さ”ばかりに目を奪われていると,導入時に思わぬトラブルに見舞われかねない。

連絡不徹底で作業に不備
屋内の配線工事が未完了

ADSLは電話回線を提供するNTT東西地域会社から,ADSL事業者,インターネット接続事業者(プロバイダ)のほか,ビルの施設管理者など様々な事業者が介在する。開通にはこれらの関係者と,作業分担や各自の作業日時,納期を打ち合わせる必要がある。特に,ADSLで電話を共用していると,発生した問題が電話サービスにまで及びかねない。

 大手ビル管理会社のA社は,全国で100カ所程度のビルと管理契約を結んでいる。各ビルの管理室では,常駐スタッフがオンラインで業務報告やスケジュール管理をできるようにISDN回線を導入。連絡用の電話と,本社へのダイヤルアップ接続で兼用していた。

 ただ,ダイヤルアップ接続は,拠点によっては通信料金が月額2万~3万円を超え,運用コストが膨らんでいた。そこでA社はISDNによるダイヤルアップ接続を,ADSLとインターネットVPNに置き換えることにした。