大島 耕二氏 ネットマークス ネットワークセキュリティ事業部 セキュリティ技術室長
鈴木 利秋氏 ネットマークス エンタープライズソリューション事業部 コンサルティング&プロジェクト マネージメントグループマネージャー

併設期間中はISDN機器は電源オフ

 B社は,インターネットVPNを導入する際,ランニング・コストと安定性を懸念していた。コストは,小規模拠点での従来の平均費用の半分にあたる月間1万5000円が目標だった。ADSLを使えばVPN機器を新規導入しても,目標を達成できると判断した。

 一方,安定性はインターネット接続事業者(プロバイダ)によって様々だ。そこで,まずB社は三つの条件を基に,プロバイダを複数選定することにした。(1)B社の拠点がある地域をすべてADSLでカバー,(2)プロバイダ側の主要設備の稼働状況を公開,(3)法人対応部門がしっかりしている――である。

 (2)や(3)の条件は,障害発生時にB社が調査すべき範囲を絞り込みやすくして,プロバイダとの交渉を確実にできるようにするためのものだ。B社はプロバイダに対し,接続回線やバックボーンのトラフィック・リポートの提出,保守や障害情報の早期通知,定期的なネットワーク運用会議の開催などを求めた。

 こうしてB社は,プロバイダを3社選び,(1)必要な通信機器の構成と設定内容,(2)VPNセッションの安定性,(3)社内アプリケーションのレスポンス時間――を確認した。(2)は,負荷のない状態と,大容量ファイルを連続的に送受信している状態で試した。(3)は利用頻度の高いものをテストした。

 結局,3社とも満足いく結果だった。そこで,B社はこれまでも契約しており,サポート内容やサービス・レベルを把握できているプロバイダを選んだ。

 プロバイダの選定作業後,B社は大規模拠点のメイン回線としてIP-VPNを導入した。IP-VPNが安定して利用できると判断してから,インターネットVPN環境への移行を開始した。

 移行直後の2週間はISDNを残しておいた。業務に支障があれば,いつでもISDNに戻せるようにするためだ。併設期間中はISDN関連機器の電源を切り,誤ってISDNの発着信が生じないよう配慮した。

 B社は段階的に作業を進めることで,安全かつ確実にインターネットVPNへの移行を完了させた。