稲荷 幹夫氏 サイバード 技術担当執行役員兼技術部長

最近は,月間5000万~5億円もの売り上げを出すモバイルECサイトが登場している。ビジネス・チャンスが大きいと見て,参入を計画する企業も多いだろう。ただ,モバイル向けサイトは接続性を確保するための工夫が必要だ。4回にわたって,ユーザーが快適に使えるモバイルECサイト構築のコツを事例とともに紹介する。

図1 A社の携帯電話向けサイトで頻発したタイムアウト
土曜深夜にアクセスが集中し,Webサーバーの処理が滞りレスポンスが8秒を超えた。約8秒を超えると,携帯電話会社のゲートウエイが携帯電話端末にタイムアウトを通知する。この結果,携帯電話向けサイトがつながらない状況に陥ってしまった。
 モバイルECサイトを構築する際,年々進歩する携帯電話端末の特性に合わせた画面設計や,入力機能の貧弱さに合わせたサイト設計ばかりに目がいきがちである。

 しかし,モバイルECサイトを運営するうえで最も重要なのは,パソコン向けサイトよりも速いレスポンスを確保することだ。サーバーのレスポンスが遅いとタイムアウトが頻発して,ユーザーがサイトにまったくアクセスできない状況を引き起こしてしまう。

アクセス集中でタイムアウト
負荷テストで問題点を発見

モバイルECサイトにアクセスが集中してつながりにくくなると,ユーザーは何回も接続ボタンを押す。その結果,サイトの処理が増えてレスポンスが遅くなり,タイムアウトが頻発する。最悪の場合,サイト・ダウンを招くこともある。

 A社が開設しているモバイルECサイトは最近になって,タイムアウトが頻発するようになってしまった。調べてみると,土曜日の深夜0時~1時30分の間にタイムアウトが特に集中して発生していた。

携帯電話網がタイムアウトを通知

 タイムアウトが頻発したコンテンツのレスポンス・タイム(応答時間)を実測したところ,タイムアウト・メッセージが出ていた時間帯にレスポンスが極端に遅くなっていた。Webサーバーの応答時間が10秒以上にも達していたのである。理由は,この時間帯におけるサイトへのアクセス数が,通常の2.5倍にも増えて,Webサーバーの処理が滞っていたからだった(図1[拡大表示])。

 携帯電話からのアクセスでは,公式サイトでも勝手サイトでもWebサーバーの応答時間が約8秒を超えると,タイムアウトが発生する場合が多い。モバイルECサイトがリクエストを受け取ってから応答するまでの処理時間が約8秒を超えると,携帯電話事業者のゲートウエイ・サーバーがタイムアウト・メッセージを携帯電話端末に送信するからである(図1)。