茂手木 昌洋 富士通 システムサポート本部ネットワークサポート統括部ネットワークシステムサポート部

外圧がかかり続けたケーブルは劣化

 A社は,より対線ケーブルの取り扱いに関しても指摘を受けた。一部の部署では,より対線ケーブルを人が行き来する通路上にガムテープで張り付けてあったのだ。

 より対線ケーブルをこうした状態で利用していると,導入時はうまく接続できていても,「通信が突然遅くなった」,「急に通信不能になった」――といった現象が起こることがある。

 より対線ケーブルでは,内部のより対線の間隔を小さくすれば,銅線から漏れる電気信号を打ち消し合う効果を強めることができ,ケーブルの品質を向上できる。A社のように無造作に配線していると,ケーブルに過度の張力や圧力がかかり,内部の“より”が解けてしまいかねない。よりが解けてしまえば品質は劣化してしまう。

 特に,2階と3階の間などビル内で階をまたがるような接続には注意が要る。ケーブル自体の重みによって張力が働き,長期間放置するとよりが解けてしまうことがあるからだ。このような接続形態では,光ファイバ・ケーブルを使えば問題を解決できる。

図2 A社は100BASE-TX対応機器を1000BASE-T対応機器に置き換えたものの十分なスループットを得られなかった
 原因は,既存のカテゴリ5のより対線ケーブルを流用したことにあった。規格上は,カテゴリ5ケーブルでも1000BASE-Tは動作することになっているが,実際はその要求品質を満たしていなかった。A社は,エンハンスド・カテゴリ5ケーブルを導入して,この問題を解消した。

1000BASEミTはケーブルの品質に注意

 A社は,スイッチ・ネットワークの大幅増強に伴い,1000BASE-T対応のLANスイッチも導入した。1000BASE-Tは規格上,カテゴリ5のより対線ケーブルをサポートしている。しかし,既存のカテゴリ5ケーブルを流用したところ,通信速度が十分に出ない状態に陥った(図2[拡大表示])。

 この現象は,ケーブル品質に原因がある。10BASE-Tや100BASE-TXの通信では,より対線ケーブルの中の2組のより対(銅線4本)しか使用しない。しかし,1000BASE-Tでは4対すべて使う。このため,1000BASE-Tはケーブル内の雑音に対し,高い品質を要求する。ケーブル品質が不十分だと,通信速度が十分に出なかったり,通信自体に支障を来す。

 A社は,ケーブル・テスターでケーブルの品質を測定してみたところ,1000BASE-Tの要求基準を満たしていないことが分かった。そこで,カテゴリ5仕様を拡張してより高い品質を保証するエンハンスド・カテゴリ5ケーブルを導入し,この問題を解消した。

 またA社の事例とは異なるが,特にパッチ・パネルや延長コネクタ,自作ケーブルを使う場合,ケーブルの品質に問題がある可能性が高い。