茂手木 昌洋 富士通 システムサポート本部ネットワークサポート統括部ネットワークシステムサポート部

より対線ケーブル(ツイストペア・ケーブル)を多数使ったスイッチ・ネットワークでは,LAN配線の大幅変更時に混乱が生じやすい。これは,利用中のケーブルの種類を容易に判別できるようにしておくだけで対応できる。また,より対線ケーブルは過度の力が加わると通信品質が劣化しやすいため,配線場所や配線の仕方に注意が要る。

 200人ほどの社員が勤務するA社の本社ビル内では,これまで4分の3程度の社員しかデスク上でパソコンを利用できなかった。今回,全社員にパソコンを配布し,LANに接続できるよう既存のスイッチ・ネットワークを大幅に増強した。つまり,端末台数を増やすと同時に,LANスイッチも増設し,LAN配線を大幅に変更した。

 A社はスイッチ・ネットワークの変更作業を,外部のシステム・インテグレータに依頼した。変更作業に立ち会ったA社の情報システム部の社員たちは,インテグレータから普段のケーブルの取り扱いについて幾つかの注意を受けることになった。

ストレート・ケーブルを基本に配線

 A社はいったん,すべての配線を外し,利用していたより対線ケーブルを集めてみた。すると,ストレート・ケーブルとクロス・ケーブルが混在していることが分かった。A社は,ルータ-とハブの間,ハブと端末の間では,大半の区間でカテゴリ5以上のストレート・ケーブルを利用していた。しかし,LANスイッチとLANスイッチの間などでは,カスケード接続が必要となる。このため,クロス・ケーブルを使っていたのである。

図1 A社はLAN配線を変更する時に備えて,大半のより対線ケーブルをストレート・ケーブルに統一した
 クロス・ケーブルを残した区間では,ケーブルに名札を付けたり,ストレート・ケーブルとは被覆の色が異なるケーブルを使うようにした。これによって,LAN配線の変更時にLANポートとケーブルの組み合わせを誤る可能性を減らせる。
 しかも,ストレート・ケーブルの表皮の配色は統一していたものの,クロス・ケーブルに関しては2通りの配色が混在していた。その大半はストレート・ケーブルと同色だったため,見た目だけでは区別しにくかった。A社はインテグレータから「すべてのケーブルをストレートに統一するか,ストレートとクロスでケーブルの配色を変えるよう普段から注意しておいた方がいい」とアドバイスを受けた。クロス・ケーブルとストレート・ケーブルを併用していると,ケーブルの張り替えや撤去などの際に2種類のケーブルが混在してしまう。間違ったケーブルで接続すると,通信できないというトラブルが起こりかねないからだ。

 アドバイスを受けたA社は,基本的にストレート・ケーブルで統一することにした(図1[拡大表示])。カスケード接続が必要な個所でも,カスケード・アダプタと組み合わせてストレート・ケーブルを利用する方策をとった。

 結局,A社は新規に購入するケーブルをすべてストレート・ケーブルにした。一部の区間にはクロス・ケーブルを残したが,ストレート・ケーブルと配色が同じものには両端に小さな名札を付けて区別しやすくした。ストレート・ケーブルと配色が異なるクロス・ケーブルは,そのまま流用した。