茂手木 昌洋 富士通 システムサポート本部ネットワークサポート統括部ネットワークシステムサポート部
オート・ネゴ機能を過信
設定矛盾が通信不良の原因
機器間の通信モードを自動調整するオート・ネゴシエーション機能を使えば,ネットワーク管理の手間を軽減できる。しかし,初期設定が不適切であると,スループットの低下などを引き起こしかねない。
引き続きA社を例に,トラブルの原因を見ていこう。
A社は次に,クライアントとスイッチング・ハブの通信モードの設定を調べた。すると,スイッチング・ハブの通信モードは「オート・ネゴシエーション」であったのに対して,スループットが低下していた一部のクライアントは「100BASE-TXの全2重通信」で固定的に設定されていることが分かった。
実はこの組み合わせの場合,オート・ネゴシエーション機能作動後の双方の機器の動作モードが不一致となってしまう(図3[拡大表示])。その結果,データ転送速度が遅くなっていたのだ。
ところが,動作モードが不一致だったにもかかわらず,スイッチング・ハブのLEDが点灯しリンクが確立できていることを示していた。このため,A社は調査の初期段階では異常に気づかなかった。
一般に,ネットワーク管理者やユーザーは,機器をより対線ケーブルで接続した後,リンク設定がうまくいって正常に動作しているかどうかを,LEDだけで判断しがちだ。しかし,そこに落とし穴がある。
オート・ネゴ非対応機の設定に注意
オート・ネゴシエーション機能は,100BASE-TXに代表される100Mイーサネットでは一般的な機能である。同機能を持つ機器同士をケーブルで接続すると,「FLP」(fast link pulse)という信号を送出し合う。FLPには,自分がサポートする通信モードの情報が含まれる。これを参照することで,最も高い性能の動作モードを自動選択する仕組みだ。接続機器がサポートする通信モードの種類やケーブル品質を考慮しなくても,最適な通信モードで通信可能になるため,ネットワーク管理が容易になる。
A社のケースでは,クライアントはオート・ネゴシエーション機能を設定しておらず,100BASE-TXの全2重通信で固定設定にしていた。このため,クライアントはFLP信号を送出しない。すると,スイッチング・ハブは,パラレル・ディテクション機能を使ってクライアントの通信モードを検出し始める。
パラレル・ディテクション機能は,10BASE-T対応機器が正常に動作している時に定期的に発信する「NLP」(normal link pulse)や100BASE-TX対応機器が発するアイドル信号を検出することで,自身を10BASE-Tや100BASE-TXに自動設定する機能。ただし,パラレル・ディテクション機能では全2重か半2重かの判別はできず,必ず半2重通信に設定される。