インターネットで使われる通信規約(プロトコル)の仕様や、運用のルールなどを記した技術文書。現在は、インターネット技術に関する標準化団体の一つであるIETF(Internet Engineering Task Force)が取りまとめ、発行している。

 RFCは、通し番号で識別する。2005年5月18日時点での最新はRFC4084だ。これだけ大量のRFCが存在するのは、書き換えることをしないから。機能の追加や仕様の変更などは、新しく発行するRFCで示す。例えば、コンピュータ名やURLから目的のサーバーのIPアドレスを見つけるのに使うDNS(ドメイン・ネーム・システム)の仕様は、いまは1987年発行のRFC1034と1035が標準とされている。しかし87年以前は、83年発行のRFC882と883が標準仕様だった。さらに今年に入って、RFC1034/1035にセキュリティ関連の仕様を追加するために、RFC4033~4035が発行された。

 同じ目的の技術を何度も規定する、いくつかの文書にまたがって仕様を示すという標準化のフローに違和感を覚えるかもしれない。ISO(国際標準化機構)やIEEE(米国電気電子技術者協会)などの国際的な標準化機関が策定する「標準」は、専門家による議論を経て、細部まで細かく決めてから発行されるからだ。頻繁に変わったり、簡単に機能追加をしたりしない代わりに、仕様の完成までの期間が長い。

 一方、インターネットの技術は実装までのスピードが重視される。そのため、大まかな合意が取れたところで暫定的な仕様を作り、それを基に実際に動くプログラムを作ってみることが大切だということで、RFCのような標準化フローが生まれた。作ったプログラムを実際に使ってみて、仕様の不具合や不足する機能が明らかになったら、いろいろな意見を取り入れながら正式な仕様に固めていく。こうした考え方は、「Rough Consensus,Running Code(大まかな合意、動作するプログラム)」という言葉で表現される。ただ、コメント募集中(Request for Comments)という名称になったのは、別の理由からである。インターネットの前身となるネットワークの技術研究は、冷戦時代に軍事用として始まった。そのため、研究成果の公開が禁じられていた。それでは技術が普及しないので、「外部からの意見を募集する文書」という形式で公開する手法が取られた。

 発行されているRFCは、IETFのWebサイト(http://www.ietf.org/rfc.html)で閲覧できる。あるRFCが、別のRFCの書き換えや追加であれば、文章の冒頭にその旨が記されている。RFC1034には「Obsoletes: 882(RFC882の置き換え)」、RFC 4033には「Updates:1034(RFC1034の機能追加)」といった具合だ。

 逆に、あるRFCが別のRFCで書き換えられているかどうか、または、何らかの追加が行われていないかどうかは、やはりIETFのWebサイトで確認できる。

(山田)

本記事は日経コンピュータ2005年5月30日号に掲載したものです。
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