LANの配線に使うイーサネット・ケーブル(UTPケーブル)を介して電力を供給する技術。2003年6月、米国の標準化組織であるIEEE(米国電気電子技術者協会)が「IEEE802.3af」として規格化した。

 PoEの機能を備えたLANスイッチと、PoE対応の機器を組み合わせて利用すれば、データを送受信するためのイーサネット・ケーブルを通じて、LANスイッチからPoE対応機器へ電力を供給できる。電源の確保が難しい場所に、ネットワーク接続する機器を設置する際に有効だ。

 具体的には、無線LANのアクセス・ポイントや、LAN直結型のカメラで使うことが多い。無線LANのアクセス・ポイントは通常、広範囲に電波を届かせるために天井や壁面に設置する。カメラも、天井や屋外での利用が多い。ともに電源コンセントの位置に合わせて設置場所を決めるわけではないため、電源の確保が難しい。

 一方で、どちらの機器もデータ通信のために有線LANとケーブルで接続する。ならば、そのケーブルを使って電力を供給できれば、別途電源を確保する必要がなくなる。

 最近では、IP電話を設置する際にPoEを利用するケースが増えている。既存のPBX(構内交換機)で使う電話機は、電話ケーブルを介して電力が供給される。そのため、電源を考慮する必要がなかった。もしもIP電話の導入でPoEを使わなければ、個々のIP電話機に電源を用意しなければならない。

 そこで、末端のLANスイッチをPoE機能付きのものに置き換え、PoE対応のIP電話機を接続して、音声データのやり取りと給電を同時にやってしまおうというわけだ。LANスイッチにUPS(無停電電源装置)を付ければ、停電時にIP電話機が使えなくなる事態も避けることができる。

 802.3afの規格では、カテゴリ5以上のイーサネット・ケーブルを使って最大15.4ワットの電力を100メートルまで供給できる。無線LANのアクセス・ポイントやIP電話機などの消費電力は5~7ワット程度なので問題ないが、パソコンのように100ワット以上の大きな電力を必要とする機器には給電できない。

 規格に対応したLANスイッチと機器をつなぐだけで自動的に電力を供給できる仕組みになっているが、接続してすぐに給電するわけではない。PoE対応のLANスイッチに非対応機器が接続されることがあるからだ。そうした機器に給電すると、壊してしまう可能性がある。そこで、PoE対応のLANスイッチは、始めに検出用の低い電圧をかけ、抵抗の状態で相手がPoE対応かどうかをチェックする。

 2003年6月の規格策定後、各機器ベンダーが802.3af対応製品を市場に投入している。LANスイッチのポート単価は、当初は数万円したが、現在は6000円程度の製品も登場している。

(安藤)

本記事は日経コンピュータ2005年5月2日号に掲載したものです。
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