広い周波数帯域の電波を利用して高速な無線通信を行う技術。Ultra Widebandの略である。

 UWBが利用する電波の帯域幅は数GHz。帯域幅が20MHz程度である無線LANに比べ、数百倍の広い帯域幅を利用する。通信速度は数百M~1Gビット/秒と、高速な有線LAN並みだ。

 ただし、電波の多くの帯域はすでに無線通信などのインフラで利用されており、UWBが勝手に使用することはできない。そこでUWBの電波出力は、他の無線通信になるべく影響を与えないようノイズ並みに抑える。そのため通信できる距離は最大10m程度と短い。

 UWBは近距離で大容量のデータを送信するのに向いている。期待されているのが、パソコン本体とディスプレイの間やテレビとDVD/ハードディスク・レコーダの間といった、機器間の画像/動画の送信だ。

 電波を利用する技術は、各国ごとに定められた機関の認可を受けなければ実用化できない。UWBの民間利用が最初に認可されたのは2002年2月。米国の連邦通信委員会(FCC)が認可した。

 このとき認可されたのが、インパルスという信号を使う通信方式だ。通常の無線通信のように変調を行うのではなく、インパルス信号を直接送信する。この方式には、低コストで消費電力が少ないという利点がある。

 ただし、現在のUWBではインパルス通信はマイナーな方式になっている。代わって有望視されているのが「マルチバンドOFDM」という方式だ。UWBで用いる周波数帯域を複数の帯域幅に分割し、従来の無線LAN技術であるIEEE 802.11a/gが採用している「OFDM(直交周波数分割多重)」という変調技術を用いて通信する。米インテルや米テキサス・インスツルメンツが提唱している。

 インパルス通信では周波数帯域を満遍なく使用するため、信号強度がノイズ並みとはいえ、既存の無線通信への影響がないとは言えない。これに対しマルチバンドOFDMでは、既存の無線技術への影響が特に問題になる周波数の帯域を使わないことで干渉を避けられる。代わりに、低コストや低消費電力といったインパルス通信のメリットは失われる。

 ほかには、DS-CDMA(直接拡散符号分割多重接続)という技術を利用する方式を米モトローラなどが提唱している。

 UWBの標準化は米国電気電子学会(IEEE)が進めている。ただ、複数の技術が提唱されているため、調整が難航している。これに業を煮やしたマルチバンドOFDM推進派は昨年6月、同技術の推進団体「マルチバンドOFDMアライアンス」を結成した。来年半ばには、マルチバンドOFDMに対応したUWB無線通信機器が発売される見込みだ。

 日本では、総務省の情報通信審議会情報通信技術分科会が、UWBの実用化に向けて解決すべき課題を検討している。

(大森)