パソコンやWebページをはじめとする情報関連のハードウエア、ソフトウエア、サービスなどを、高齢者や障害者を含む多くのユーザーが不自由なく利用できること。この分野で先行しているのは米国だが、日本でも6月20日に関連のJIS規格が出そろうことをきっかけに、政府や企業の取り組みが活発になりつつある。

 情報アクセシビリティを実現する際には、「視覚や聴覚、手の動きなどに障害がある人に使いやすくするにはどうすればよいか」を考慮して、製品やサービスを設計しなければならない。その場合に対象となるのは法律上の障害者に限らない。健常者であっても、加齢のために視力が衰えたり、一時的にケガを負ったような場合、製品やサービスの情報アクセシビリティが必要になる。

 情報アクセシビリティで考慮すべき障害の種類や程度はさまざまだ。軽度なものとしては、色覚障害がある。日本人男性の5~7%、北欧男性の11%は何らかの色覚障害を抱えているといわれる。こうした人たちは、「灰色とピンク」のような特定の色の組み合わせを区別するのが難しい場合がある。パソコン・ソフトやWebページを設計するときには、こうした点に配慮して背景やボタンの色を決めなければいけない。

 日常生活で色覚障害が支障をもたらすことは少ないが、業務によっては影響を及ぼしかねない。例えばプラント施設では、操作ミスを防ぐために構内のパイプラインを色分けすることがある。オンライン・マニュアルや業務管理ソフトでも同じように色分けする。その際、色の違いがわからないと予期しない事故を招く可能性がある。現在では、こうした用途でも色覚障害に配慮した色分けの見直しが進んでいる。

 一方、重度の障害者は、点字ディスプレイや呼気スイッチ(息を使うストロー状の入力装置)、視線入力用のソフトウエア・キーボードといった、特殊な入出力手段を利用するケースが多い。こうした機能は必ずしも製品開発者が自前で用意する必要はない。OSが標準で備える音声合成機能を利用したり、他社のハード/ソフトと無理なく連携できるような仕組みを用意すればよい。

 Webサイトのアクセシビリティを高めるには、気負わずにできるところから着手することが肝心である。例えばフォントの大きさを固定していないか、OSが標準で用意する画面拡大機能を阻害しないか、などの点をチェックすることが先決だ。

 アクセシビリティは本来、道路や公共施設なども対象とした幅広い概念である。単純に使いやすさを示す「ユーザビリティ」と違い、高齢者や障害者をユーザーとして想定し、彼らが使えるか/使えないかを指す意味合いが強い。類語に、目的地や情報へのアクセスを妨げる障害を取り除くという意味の「バリアフリー」がある。これらの概念を包含する言葉として「ユニバーサル・デザイン」を使うことも多い。

(本間)