人やモノ、情報の状態・状況のこと。分かりやすい例では、人の在席状況、人やモノの位置といった情報が挙げられる。プレゼンスを一元管理すると、例えばだれが今どこにいて、連絡を取り合える状況にあるかどうかを把握でき、コミュニケーションの効率を高められる。

 もともとはテキスト・メッセージをリアルタイムにやり取りするインスタント・メッセージ(チャット)の機能の一つとして、1997年ころに考案され、開発が進められてきた。最近は、IP電話などのリアルタイムに情報を交換するシステムや在庫引き当てなどのシステムとプレゼンス管理機能を組み合わせて利用するようになっている。

 電話の場合、かけてみるまで相手が不在かどうかわからない。このため、場合によっては相手につながるまで繰り返し電話をかけなければならない。

 プレゼンスを活用すれば、相手が在席していることを確認したうえで連絡を取れる。相手が「離席中」ならプレゼンスが「在席」になるまで待てばよいし、「外出中」の場合は携帯電話などの代替手段を使わないと連絡できないことが分かる。「作業中」など即座に連絡を取れない状態だと判断できれば、電子メールを送るなどで対応できる。こうした利便性に注目して、社内でプレゼンス管理を実現するユーザーが徐々に登場している。

 インスタント・メッセージ以外の分野にも応用できる。例えばIP電話は、製品によっては在席状況を登録・表示できる。さらに言えば、プレゼンス情報に連絡手段も含めておき、相手の状況に応じて連絡手段を自動選択するようなアプリケーションも作り込める。

 GPS(全地球測位システム)や無線LANの応用技術を使えば、人やモノの位置を把握することも可能。業務に応用すれば、営業員の顧客応対を迅速化したり、店舗内で店員を最適な配置になるように誘導できる。倉庫内で使えばピッキング業務を効率的に行える。

 プレゼンス管理向けの技術はすでに多くの製品に実装されている。代表例は、日本IBMの「Lotus Instant Messaging and Web Conference」(旧Sametime)やマイクロソフトの「Microsoft Office Live Communications Server 2003」(クライアントは「Windows Messenger」)といったインスタント・メッセージ製品。沖電気工業や日立製作所、富士通など国内のコンピュータ・メーカーは、プレゼンス管理専用のサーバー製品を提供している。

 ただし、人のプレゼンス管理には課題がある。プレゼンスを更新する仕組みが必要なことだ。インスタント・メッセージやIP電話では、ユーザー自身がプレゼンスを登録する必要がある。ICカードなどを併用して人の動きを捕捉し、自動的にプレゼンスを更新する仕組みは構築できるが、この場合はユーザーのプライバシが問題になる。

(河井)