業務・システム最適化計画は、中央省庁が構築するシステムの指針やスケジュール、システム設計図を記述したもの。各省庁が主要システムを構築するときには、必ずこの計画を策定することが、2003年7月に政府方針として決まった。政府の現行の業務やシステムを変えて“最適化”に向かうための計画であるため、このような名前になった。

 電子政府を構築する目的は、利便性の高い行政サービスや、低コストでサービスを提供できる効率の高い簡素な政府を実現すること。この目的を達成するため、業務・システム最適化計画では、「省庁をまたがるシステムの連携」や「複数省庁におけるシステムの重複の排除」を目指している。

 各省庁がバラバラにシステムを構築すれば、システムの連携は難しくなり、重複投資も生じやすくなる。これを避けるため総務省は2004年2月、最適化計画を作成する対象として72種類の業務・システムを選定、各システムの構築を担当省庁に割り振った。担当省庁は2005年3月末までに、業務・システム最適化計画を作成することになっている。

 72業務・システムのうち21種類は、複数の省庁が利用する共通システムだ。具体的には人事・給与システムや研修・啓発システムなどが選択された。残りの51種類は、省庁がそれぞれ個別に構築するシステムで、特許庁の「特許事務システム」や法務省の「出入国管理システム」などがある。51種類の業務・システムのうち26システムは、メインフレームなどで構築したいわゆるレガシー・システムである。

 各省庁は、2004年2月に総務省が全省庁に配布した「業務・システム最適化計画策定指針」(以下、ガイドライン)に基づいて最適化計画を作成する。このガイドラインには、業務モデルやデータ・モデルなどシステムの設計図を作成することに加え、システム導入の目的や効果、スケジュールを明示しなければならないと規定されている。

 業務・システム最適化計画を策定するときは、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)と呼ぶ手法に基づいて、業務やシステムを分析する。EAは米国の研究者が全体最適のシステムを構築する手法として考えたもので、米国連邦政府が用いている手法である。

 EAに基づいて各省庁が最適化計画を作れば、設計図の書き方が統一され、各省庁の業務やシステムを横並びに比較して改善しやすくなる。これまではベンダー独自の設計書を利用していたため、比較・検討が困難だった。

 業務やシステムの比較が可能になれば、異なる省庁が同じシステムを共有したり、データの標準化を図ったりすることが容易になる。またEAは、システムの将来像を描き、それに近づけていくためのプロセスを提示している。このプロセスに従って計画を立て実行すれば中長期的に最適化へ向かうことができる。

(森側)