飛島建設は2001年10月をメドに,SAPジャパンのERPパッケージ(統合業務パッケージ)R/3を使って,基幹系システムを全面刷新する。FI(財務会計),CO(管理会計),SD(販売管理)など,R/3の8モジュールを一斉導入し,全基幹業務をカバーする。このほか,人事管理モジュール(HR)を2001年3月に先行稼働させた。すべての基幹系システムをR/3で構築するのは,建設業界では同社が初めて。

 飛島建設は,R/3の導入によって,「プロジェクトの受注から施工,保守といった一連の業務を統合管理することで,プロジェクトごとの収益管理の徹底を目指す」(板場通夫企画本部情報システム部長)。R/3導入に伴うシステム投資額は,約20億円の予定。同社は1000億円以上の有利子負債を抱えているが,経営再建のためには,システム基盤の整備が不可欠と判断して投資を決めた。

 飛島建設が導入する9モジュールの中には,建設業界向けの業務モジュールが二つある。ジョイント・ベンチャー方式の土木・建設プロジェクト向けの管理会計モジュール「JVA」と,土木建設機材の管理モジュール「CEM」である。

 これまでJVAとCEMは日本語化されておらず,国内での導入事例はなかった。しかし,飛島建設は「当社には必須の機能と考えたので,SAPジャパンにお願いして日本語化してもらった」(板場部長)という。

 システム面の特徴は,導入済みのグループウエア「ノーツ ドミノ」のクライアント・ソフトから,R/3システムにデータを入力したり,参照すること。R/3とノーツ ドミノの間は,日本アイ・ビー・エムのメッセージ連携ソフト「MQSeries」などを使って接続する。

 R/3システムの操作方法の教育に苦労するユーザー企業は多い。だが,飛島建設の場合,「一般のユーザーが目にするのはノーツ・クライアントの画面だけなので,R/3システムの操作教育は必要ない」(板場部長)という。

 ユーザー・インタフェースにノーツ・クライアントを利用するデメリットもある。R/3が標準で備えるワークフロー管理機能を使えないことだ。そこで飛島建設は,日本アイ・ビー・エムのワークフロー・エンジン「FormWave for Notes」を導入し,りん議や決済のワークフローを制御する。

 新システムの開発・運用は,富士銀行系の情報システム会社である富士総合研究所が担当する。開発には日本IBMも参加する。R/3は,富士総合研究所が所有するサーバー上で動かし,専用線経由で利用する()。R/3のモジュールはRS/6000 SP上の6ノードを割り当てる。データベース・ソフトにはDB2を使い,メインフレームのS/390上で動かす。

(戸川 尚樹)

表●飛島建設がR/3を使って構築する新基幹系システムの概要