伝票などのビジネス・フォーム分野で昔から圧倒的強さを誇るのがトッパン・フォームズだ。ペーパーレス化が進む時代にあっても,実に6期連続の増収増益を見込む。同社は今,印刷業から脱却し,総合データ処理サービスの企業に変ぼうしつつある。顧客から受け取ったデータを単に印刷するだけでなく,“パーソナライズ”された内容にしたり,インターネット経由で配信するといった新しい試みを始めた。

 のり付けされたハガキをめくると,利用料金の明細や督促の案内,新商品の紹介などが現れる郵便物をご存じだろう。実はこの“大発明品”,トッパン・フォームズが1991年に「POSTEX」という商品名で市場に出したのが世界で初めてだった。表と裏,両面張り合わせれば,2面の普通ハガキに比べて3倍にあたる6面分の情報量を載せられる。加えて,封書と同等の機密保持性を保ちながら,封書より30円安いコストですむ。企業にとって,この差は相当なものだ。今や,郵便ハガキ総数の3~4通に1通が,こうしたのり付けハガキといわれている。

図1●トッパン・フォームズの業績推移(決算期は3月)
2000年度も増収増益を見込む

 トッパン・フォームズは,のり付けハガキの分野で200以上の特許を持ち,市場のシェアも1位だ。もともとは,伝票などのビジネス・フォーム事業から始め,以前からトップシェアを誇っているが,最近は「データ・プリント・サービス(DPS)」も主力事業に育った。DPSとは,POSTEXなどのハガキや封書用のフォームに,顧客企業から受け取った何百万人分ものデータを印刷し,発送までを一括して請け負うものだ。

 ビジネス・フォーム事業はコンピュータの普及で頭打ちになったものの,データ印刷という付加価値を付けたDPS事業は毎年2けた成長を記録。今では同社の売り上げの2割を占め,5期連続増収増益の牽引役になっている(図1[拡大表示])。DPS市場でのシェアも45%でトップ。現在,トッパン・フォームズのDPSが扱う郵送物は,月間1億通以上にも達する。同社は顧客企業の名前を公表していないが,本誌の調べではNTTドコモやJCBなど大手企業の請求書発行業務などを請け負っている。

(井上 理)