日立製作所、富士通、NECの国産インテグレータ3社がSOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくシステムの導入サービスを相次ぎ開始した。いずれも、SOAの中核を成す「サービス」の作成やその利用を支援する。国産大手の参入で、SOAの普及が加速しそうだ。

図●日立製作所、富士通、NECの3社が提供する
 企業システム全体を「サービス」の集合ととらえるSOAに基づいてシステムを構築する場合、「どのようにサービスを実現するか」が大きな問題になる。特にサービスの大きさ(粒度)を決めるのが難しく、ここがシステム開発のボトルネックになる可能性が高い。サービスの粒度を適切に決めておかないと、「サービスを組み替えたり再利用することで、業務(ビジネス・プロセス)の変化に合わせてシステムを柔軟に対応できる」というSOAのメリットが生かせなくなる。

 日立製作所、富士通、NECが提供を始めたのは、この問題点の解消を狙ったシステム・コンサルティング・サービスだ。日立は7月6日に、「サービス指向システム構築支援コンサルティング」という名称でコンサル・サービスの提供を開始。富士通も今年12月までに、「SDAS/Service Modeling」として提供する予定だ。これに先立ち、NECは4月18日から日立や富士通と同種の内容のコンサル・サービスを提供している。

 3社のコンサル・サービスは大きく、(1)企業の業務(ビジネス・プロセスやデータ)を分析する、(2)その結果を基に、SOAに基づくシステムの構築に必要な「サービス」を作成する、(3)顧客の要求に従って、サービスを組み合わせる、の三つで構成する([拡大表示])。必要に応じて、各社がすでに提供しているEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)導入サービスを併用する。

 特に売り物にしているのは、(2)でサービスの粒度を適切に決めるコンサル・サービス。各社ともこれまでのシステム構築ノウハウを生かして、独自の方法論を作成して利用する。

 なかでも手順を細かく決めているのは日立だ。業務を4段階のレベルで細分化していくことで、必要なサービスを規定する。例えば、最上位(ファンクション)の「調達」という業務を、第2段階(サブファンクション)で「仕入先選定」、「購買」などに分解。

 さらに「購買」を第3段階(タスク)で「発注」や「受入検収」などに分ける。最後に、最下位(サブタスク)で「発注」を「発注指示」、「発注書発行」といった業務単位に切り分ける。原則としてこのサブタスク段階の粒度で、サービスを作成する。

 富士通とNECのコンサル・サービスでは、サービスの粒度を決める手順はほぼ同じだ。データ・モデリングとプロセス・モデリングの成果物(ER図や業務フロー図など)を基に、適切な単位を決めていく。富士通はSDAS/Service Modelingを、この手順に基づいて実施する予定だ。NECは4月に新設したソフトウェアエンジニアリング本部に所属するアーキテクトが、この作業を担当する。

 SOAを対象とするシステム・コンサルティング・サービスは、すでに日本IBMや日本BEAシステムズなどの外資系ベンダーが昨年から提供している。国産大手がこの動きに追随することで、SOAの普及にいっそう弾みがつくとみられる。

(矢口 竜太郎)