情報システムのアーキテクチャ策定を担う職種として注目を集める「ITアーキテクト」の認定資格が登場する。オープン・グループが7月から順次、マイクロソフトが来春にも試験を開始する。ITアーキテクト育成を目指すユーザー企業やベンダーを支援するのが狙いだ。

表●日本で始まるITアーキテクト認定試験の概要
 「変化に強い情報システムを構築・維持するため、今後ITアーキテクトのニーズはますます高まる。しかし必要な実績とスキルを持つ人材はまだ少ない。認定資格によって、ITアーキテクトを質・量ともに充実させたい」。IT標準化団体である米オープン・グループの日本代表を務める藤枝純教氏は、ITアーキテクトの認定資格を開始する理由をこう説明する。

 オープン・グループは7月に、米IBMおよび米HPと共同で作成した「IT Architect Certification(ITAC)」を世界同時に開始(受講料は数万円程度)。続いて11月に、米国で2004年2月から実施している「Certified TO GAF Architect(CTA)」を日本語化して始める(同63万円)。一方、マイクロソフトは2006年春にも、「Microsoft Certified Architect(MCA)」を開始する予定だ(同未定、[拡大表示])。

 三つの認定資格はどれもITアーキテクト全般を対象にしているが、位置付けがやや異なる。ITACとMCAは、ITアーキテクトの基本となる知識やスキルを認定する。ITACはベンダー非依存だが、MCAはマイクロソフト関連技術の比率が高いといった違いがある。CTAは、基本的な知識やスキルに加えて、アーキテクチャを策定する際に必要な方法論の習熟度を認定する。

 ITACでは特に経験を重視し、「リーダーとして他のITアーキテクトを率いたことがあるか」、「企業内だけでなく社外で積極的に発言しているか」などを審査する。試験は当面は英語版だけで、日本語化するかどうかは未定。米国では、IBMやHPがオープン・グループから受託する形で、自社エンジニアなどの認定作業を実施するという。

 CTAは、オープン・グループのアーキテクチャ策定方法論「TOGAF(The Open Group Architecture Framework)」の習熟度を認定するものだ。TOGAFはEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)を策定するための方法論。受験者は4日間のトレーニングを受けた上で、CTAの試験に臨む。試験にパスするには、「TOGAFの方法論やレファレンス・モデルなど広範な内容を習得する必要があり、かつEAのコンサルティング経験が最低でも5年は必要」(藤枝氏)。難易度はかなり高い。

 マイクロソフトのMCAでは、各受験者に「メンター」を一人ずつ割り当てる。受験者はメンターの助けを得てMCAの内容を学び、マイクロソフトの審査委員との面接を経て認定される。

 MCAの試験内容は、アーキテクチャ策定の方法論に関する知識、実際のアーキテクチャ策定経験、リーダーシップや技術知識の幅広さなど。「ITアーキテクトには、マイクロソフト製品や技術にとどまらない幅広い知識やスキルが必要になるのは自明。加えてITアーキテクトとしての10年程度の経験が望ましい」(マイクロソフト)。

 日本では、ITスキル標準(ITSS)の1職種としてITアーキテクトが定義されている。ITSSを運営する情報処理推進機構は、今回の認定資格との関係について、「ITSSとの詳細な対応関係を調査していく」という。

(玉置 亮太)