金融庁から準備不足を指摘された東京三菱銀行とUFJ銀行の勘定系システム統合。だが両行は、テスト手法の相違点などを洗い出し、統合に向けたテストの第2段階である接続テストを無事終了した。10月の統合を目指し、現在は予定通り総合テストに入っている。

図●東京三菱銀行とUFJ銀行の勘定系システム統合における「Day1」*フェーズの開発スケジュール
 「勘定系システムの相互接続を10月に実行するかどうかを8月31日に最終判定するにもかかわらず、一部の障害試験や性能試験を9月に予定している」、「テストの実施手順が具体的に決まっていない」。金融庁の指摘は、東京三菱銀行とUFJ銀行のシステム統合作業のうち、テスト計画に集中した。

 これを受けて両行は、9月に実施していた障害試験や性能試験、切り替えリハーサルを8月に前倒ししたり、テスト計画書に具体的な実施手順を追加したりいった対策を、今年5月の検査完了までに終えた。テスト計画の不備についても、この時点で修正をすませた([拡大表示])。

 だが実は、金融庁はもう一つ重大な指摘をしていた。「つなぎ方式の怖さを分かっていない」という点だ。「つなぎ方式」とは、二つの勘定系システムをリレー・コンピュータやハブ・システムを介して接続する手法だ。いきなり一本化するのでなく、一時的に二つの勘定系を相互接続して、あたかも一つの勘定系システムのように処理をこなす処置である。つなぎ方式の怖さは、二つの勘定系システムの開発を別々に進めながら、最終的にシステム全体の整合性を確保しなければならないところにある。

 金融庁が心配するのは、つなぎ方式の経験が両行に乏しいからだ。UFJは三和銀行と東海銀行のシステム統合で、合併と同時に二つの勘定系を一本化しており、つなぎ方式の経験がない。東京三菱は、1996年4月に三菱銀行と東京銀行の合併で、つなぎ方式を経験しているが、9年も前のことである。

 今年5月に両行の勘定系システムをつないで接続テストを始めた当初は、金融庁の指摘が当たっていた。その最たる例が“テスト作法”の違いだ。例えば、ATM(現金自動預け払い機)の利用手数料切り替えをテストする場合、UFJは手数料が変わる時刻の設定を変更し、時間を繰り上げてテストを消化することがある。東京三菱は、実際に切り替わる午後6時を待って実行するのが通例。二つの勘定系システムにまたがるテストで、こうした作法の違いが顕在化して消化効率が落ちた。

 テスト作法の違いによる遅れを取り戻せず、苦しんでいるのではないか-。弊誌のこうした問いに、東京三菱の幹部は「異なる会社が一緒にプロジェクトを進めるのだから、テスト環境や実施手順に不一致があるのは仕方のないこと」とした上で、遅れについては「すでに終わった接続テストでの話だ」と説明。業務ルールを確認する総合テストは「6月以降、ほぼ計画通りに進んでいる」と続けた。接続テストで作法の違いを一通り洗い出し、遅れも取り戻したというわけだ。UFJのシステム部門幹部も、「現在は総合テストも半ばを過ぎ、バグの収束段階に入った」と話す。

 10月1日の切り替えを判断する8月31日まで、残り約50日。3万3000人月に及ぶ巨大プロジェクトには厳しい視線が注がれている。

(大和田 尚孝)