プロジェクトマネジメント・ブームの陰で、「プロマネなんてなりたくない…」と言い出す若手エンジニアが増えている。その裏にあるのは、過酷ともいえる労働実態。やりがいや達成感を感じながらも苦悶する、プロマネたちの姿を追った。

(高下 義弘)

 数年前から続くプロジェクトマネジメント熱は、いっこうに収まる気配をみせない。各社はSIビジネスの収益力強化に向けて、プロジェクト・マネジャ(プロマネ)育成に全力を挙げる。プロマネの国際資格「PMP」の国内における取得者数は、ここ5年間で9倍に増えた。年内には1万人の大台を突破する見通しだ。

 その一方で、「プロマネなんてなりたくない…」。こう言い出す若手エンジニアが増えている。

 日本IBMを例にとると、プロマネ志望者は年間30人弱と、プロマネ候補である入社7~8年目のエンジニアの1割程度だ。本誌が5月、Webサイト「ITPro」上で実施したアンケート調査でも、プロマネ志望者は10人に1人しかいなかった。

 「最近の若手の人気職種は、コンサルタントかアーキテクト。プロマネ志望は少数派に転落した」(メインフレーマの人事担当者)との証言もある。「ここまで希望者が少ない現状では、プロマネの育成目標を下方修正するしかない」と、あるベンダーの役員はこぼす。

 プロジェクトマネジメント・ブームの裏側で、何が起こっているのか。プロジェクトの現場を歩き、現役プロマネたちの本音を聞いて回った。

 すると、そこには「すべてのITエンジニアが目指すべき職種の一つ」や「SIビジネスの牽引役」といった口上の裏で、やりがいや達成感を感じながらも、苦しむプロマネ職の姿があった。

 「『プロマネが重要』と経営者は力説するが、我々を取り巻く環境は何も変わっていない。実態は現場の便利屋だ」、「問題が起きても会社は『現場の裁量で乗り切れ』というばかりで、何のサポートもしてくれない」、「どんなに難しいプロジェクトでも、『成功して当たり前』とみなされる。失敗したら、すぐにマイナス評価が付く」――。現役プロマネたちは、悲鳴を上げている。

 これらの悲鳴をこのまま放置していたら、プロマネのなり手は減る一方だ。行き着く先にあるのは、「プロジェクトは破綻」、「顧客はビジネスに失敗」、「プロジェクト・メンバーは心身ともに消耗」という、負の連鎖である。