デュアルコア・プロセサを搭載したサーバーに対する、データベース・ベンダーの価格戦略が大きく分かれ出した。日本オラクルはコア単位で、マイクロソフトはプロセサ単位で課金する。日本IBMは両方の方法を混在させ、プロセサの種類によって区別する方針を明らかにしている。

表●主要データベース・ベンダーのデュアルコアのライセンス体系
 最近、データベースのライセンスを変えたのは日本IBMである。同社は4月に、「x86系のデュアルコア・プロセサは、1基のチップで1個のプロセサと数える」という、ソフトウエアのライセンス方針を明らかにした([拡大表示])。これまでIBMは、デュアルコア化済みである自社プロセサのPowerについては、コア単位で課金していた。

 デュアルコア・プロセサは、1つのチップ上に、演算処理部分であるコアを2個搭載する。理論的には、デュアルコア・プロセサは、2個のプロセサで演算するのと同じ処理ができる。2個のプロセサを1個にまとめたとも判断できるため、これまでプロセサ単位で課金してきたソフトベンダーの対応が注目されてきた。

 日本IBMの方針変更は、出荷台数の多いIAサーバーのデュアルコア・プロセサ化を受けたものである。4月22日に日本AMDが64ビット・プロセサ「Opteron」のデュアルコア版を出荷したのに伴い、日本IBMに加え、サン・マイクロシステムズや日本ヒューレット・パッカード(HP)などが、このプロセサを搭載したサーバーを発売する。最も早い日本HP製品の出荷は5月末だ。プロセサ最大手の米インテルも今年後半に、Itanium2のデュアルコア版「Montecito(開発コード名)」の出荷を予定している。同社のアビ・タルウォーカー副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長は、「2006年末までにサーバー向けのプロセサのほぼ100 %をデュアルコア化する」と話す。

 マイクロソフトは昨年10月に、複数のコアを搭載するマルチコア・プロセサについて、プロセサ単位で課金することを表明している。「ユーザーに分かりやすい体系にすることを優先した。マルチコアかどうかはユーザーには関係ない」(マイクロソフト)としている。

 だが、すべてのデータベース・ベンダーが、デュアルコアのプロセサを1個と見なすわけではない。日本IBMもPower搭載サーバーについては、これまでと同じようにコア単位で課金する。「Powerは、コア数の増加に応じて性能が向上する」(日本IBM広報部)というのが“公式”の理由である。

 データベース最大手の日本オラクルは、IAサーバー向けかどうかを問わず、1個のコアをプロセサと同様に扱う。デュアルコアの場合は、単一コアのプロセサ2個分を課金することになる。

 ある日本オラクル幹部は、「実態を無視して課金方法だけに注目するのは意味がない。x86系のデュアルコア・プロセサの性能は、2個のシングルコア・プロセサよりも低いのが現状だ。ユーザーは、シングルコア・プロセサを複数搭載するサーバーを選ぶのが良い方法ではないか」と話す。

 プロセサで課金するのかコアなのかで、データベースの値段は2倍に上下する。IAサーバーのユーザーは価格に対する意識が強く、現状のままでは、コア単位で課金しているベンダーが不利になりかねない。課金方式の差が市場を動かす可能性もある。ただ、この点はベンダーも気づいている。前出の日本オラクル幹部は、「デュアルコア・プロセサ搭載サーバーが普及していけば、ライセンス方針の変更もあり得る」として今後に含みを持たせた。

(岡本 藍)

本記事は日経コンピュータ2005年5月16日号に掲載したものです。
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