三菱東京フィナンシャル・グループ(MTFG)とUFJグループ(UFJG)の経営統合の行方が、IT業界でも注目を集めている。最大の難関である東京三菱銀行とUFJ銀行の勘定系システムは、東京三菱(IBM機)もしくはUFJ(日立機)への一本化、2系列のシステムを残すといった三択になる。

表●三菱東京フィナンシャル・グループとUFJグループの主要システムとシステム子会社、主な担当ベンダーの関係
 MTFGとUFJGの傘下にある銀行・信託銀行、証券会社のそれぞれを統合させることになれば、どちらのシステムを残すかというシステム統合の問題が避けられない。最大の難関は、東京三菱銀行とUFJ銀行の勘定系システムの統合だ。東京三菱銀行の勘定系は日本IBMが、UFJ銀行は日立製作所がそれぞれ手がけている([拡大表示])。

 経営統合はMTFGがUFJGを救済するといった見方が強いだけに、システムをどちらかの銀行に一本化(片寄せ)するなら、東京三菱銀行のものを残す可能性が高い。「東京三菱銀行にはシステムに造詣の深い経営陣が多く、システム案件で妥協するはずはない」(金融システムに詳しい関係者)。

 一方、勘定系システムだけを比べれば、リテール業務に強いUFJ銀行のシステムが、処理性能や機能面で東京三菱銀行より勝るとの見方もある。システム統合は規模の大きい銀行のシステムを残すのが定石だけに、「片寄せするなら規模が大きいシステムへ」といった選択もあり得る。これに対し、東京三菱に片寄せする場合、1秒当たり数百件程度のトランザクション処理が限界といわれる東京三菱銀行の勘定系システムを、数千件のレベルまで拡大しなければ、保有口座数がざっと3000万程度に及ぶ合併行の処理をこなせない。

 メガバンクの勘定系システム統合は、最大で4000億円の費用と5年以上の年月がかかった事例もあるほど、企業体力を消耗する作業だ。さらに失敗のリスクもある。それだけに当面の間は2行のシステムを残し、リレー・コンピュータでつなぐ方式を採る可能性もある。「無理にシステムを統合しなくても、人員や店舗の削減による効率化でコスト削減は十分可能」(関係者)。企業の統合を優先で進め、システムはしばらくの間2系列でしのぐ。同時に、IT先進企業として名高い両行のシステム部門から精鋭を集結させ、一気に次期システム構想をまとめ上げる。こんなストーリーもあり得る。

 記事を執筆している7月15日の時点で、MTFGとUFJGは統合計画の詳細について「未定」(広報)としているが、IBMと日立は戦々恐々だ。両社は万が一ここで勘定系を失うと、メガバンクの勘定系システムでの実績がなくなってしまうからだ。両グループのシステム関連会社を含めた4000人のシステム要員の将来も不透明だ。

(大和田 尚孝)