富士通は、他社はもちろん、自社のメインフレームのユーザーにも、レガシー・マイグレーション「TransMigrationサービス」を売り込む。レガシー・マイグレーションとは、メインフレームで動く業務アプリケーションの機能を変えずに、オープン系に移植すること。ここ1~2年、企業システムのTCO(総所有コスト)を減らす有力手段として注目を集めている。
図●富士通のマイグレーション・サービス「TransMigrationサービス」の強化点と利用イメージ |
富士通はこれまで、自社メインフレームのユーザーにはマイグレーションを積極的に提案してこなかった。しかし需要の高まりを無視できないと判断。顧客のあらゆるニーズに応える「全方位戦略」の一環として、TransMigrationサービスを拡充する。
その目玉は「メインフレームに比べてぜい弱」とされてきたオープンシステムの欠点を補う機能を備えるミドルウエア「マイグレーションスイート(仮称)」の提供である。このミドルウエアを使って、オープンシステムのバッチ運用機能を強化する。システム全体を一つのコンソール画面で集中制御したり、ジョブの実行過程で生成する中間ファイルに追加書き込みする機能を実現する。
さらに、オンライン・トランザクション処理環境を整備する。トランザクション処理の過程で、デッドロックなどの異常が発生した際のハンドリング機能をマイグレーションスイートで提供する。いずれもメインフレームは標準で用意しているが、オープン系ではアプリケーションの作りこみが必要になることが多かった機能である。
マイグレーションスイートは、Webアプリケーション・サーバーや運用監視ツールなどのオープン系向けミドルウエアと組み合わせ、動作検証をすませたシステム基盤「Piテンプレート」の一部として年内をメドに提供する。
このほかプログラムや画面定義などアプリケーション資産を自動変換するツールの変換精度を高める。変換可能な開発言語の種類も順次増やす(図)。
これらの強化・拡充により、富士通はマイグレーションにかかる費用を下げ、TransMigrationサービスの受注拡大に弾みをつけたい考え。「マイグレーション費用を、オープン化で削減できるコストの2年分に収められる計算」(坂下善隆ソフト・サービス共通技術センター長)という。
富士通は「適性や要件により、メインフレームが最適なシステムはあるので、メインフレームの提供は続ける」(坂下センター長)との姿勢を貫く。とはいえ、国内で4000以上のメインフレーム・ユーザーを抱える最大手の動きは、日本における脱レガシー・システムの流れを一気に加速させる可能性を秘めている。