独立行政法人の日本貿易保険は4月12日、同社の基幹システムである「保険業務システム」の再構築計画を公表した。現状のシステムは、COBOLプログラムで約550万ステップとなる巨大な“レガシー・システム”。これを、Javaで再開発する。2006年1月に稼働開始する計画である。

図●保険業務システムの再構築でハードウエアとアプリケーション開発の入札を完全に分離

 日本貿易保険の総務部 畑(はた)幸宏システム室長は、「1992年に開発した当初は約250万ステップだったが、継ぎ足しの開発でコードは倍以上になり、保守コストが大きくなってきた」と再構築に至った事情に言及する。

 ただ再構築には、もう一つのきっかけがあった。「(電子政府構築のため内閣に設定した組織)IT戦略本部から“レガシー刷新”の指示がきた」(畑システム室長)のだ。現状のシステムは、NECのメインフレームACOS-6で稼働している。レガシー刷新は、自民党の「e-Japan重点計画特命委員会」が出した指針に基づき、IT戦略本部を通じて中央省庁全体で進めているが、同システムはその第1号となる。

 再構築は、日本貿易保険が入札をかけた結果、主に日本IBMが担当することになった。現状のシステムを三つの新システムに分割して開発する。(1)保険業務の基幹部分である「保険業務システム」、(2)会計や総務業務のための「会計総務システム」、(3)再保険処理のための「再保険特別会計システム」、である。メインとなる(1)を日本IBMが落札し、開発費用は39億7950万円。

 調達先ベンダーの選定には、政府関係でこれまでにない方法を取り入れた。日本貿易保険は、アプリケーション開発とハードウエアの調達を全く切り離した。日本IBMの金融システム事業部 第一事業部 第一営業部の安部欣也クラスターサービスマネージャーは、「公共系の入札で自社を見渡した限りでは例がない」と異例な条件であることを明かす。

 ハードウエアの調達は今年末に入札を行う予定である。畑システム室長は、「アプリケーションは、OSやミドルウエア、ハードウエアの構成にかかわらず稼働するようベンダーには伝えてある」と語る。Javaによる開発を必須条件にしたことは、Webアプリケーションであることに加えてハードウエア非依存を狙ったためだ。

 ハードウエアに依存しない形で開発ができるかどうかに対して日本IBMの金融ソリューション・センター 保険第四ソリューション・サービスの福島崇夫ICP-ITスペシャリストは、「サーバー向けJava技術のJ2EEを用いる範囲であれば移植性をある程度確保できる」とする。逆に言えば、OSやミドルウエアに依存する部分は、変更のリスクを日本IBMが抱える。

 また安部マネージャーは、「ハードウエアが他社製になった場合に性能や障害に対してどのように保証するのか問題は残る」と指摘する。例えば、ハードウエア設計を前提にした、性能向上や障害対策のためのアプリケーション設計ができない。ハードウエア非依存のアプリケーション開発がコスト減につながるのか、あるいはコスト増になってしまうのか、結果を注目したい。

(森側 真一)