総務省は2月10日、電子政府構築計画に沿って再開発を進める中央省庁内の業務とシステムを公表した。業務やシステムのうち、省庁共通的なものが21種、省庁個別のものが51種、合計72種。各省庁はこれらのシステムを再構築するための「最適化計画」を2005年度末までに順次策定する。

表●電子政府として再構築する省庁共通の業務とシステム

 省庁共通的な業務・システムとは、「人事・給与」のような省庁ごとの差があまりないシステムである([拡大表示])。これまでは、各省庁で同様なシステムを重複開発し、無駄が大きかった。総務省は昨年8月から各省内の業務を分析し、12月にそれらを整理した。その上で担当する省庁を調整して決定。担当省庁は最適化計画を策定し、それに従ってシステムを構築する。

 最適化計画は、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)と呼ぶ手法に基づき作成する業務体系や利用技術体系に加え、実施スケジュール、目的や効果などを文書化したもの。最適化計画策定のための指針を総務省がまとめ、2月10日に各省庁に配布した。効果には、具体的な内容を盛り込む。例えば「システムの運用経費を年間3億円削減」、「行政サービスを24時間365日提供」などだ。

 人事・給与を担当する人事院などは先行して作業を進めている。2月末には最適化計画を出す。それに続き、2004年夏に物品調達や旅費など省庁内の管理業務の最適化計画を、経済産業省などが策定。その後、2006年3月までに省庁個別業務も含め、72業務・システムすべてにおいて最適化計画が出そろい、システム構築が順次開始される。

 最適化計画の策定は各省庁が並行して進める。そのため、結局はシステムの共通化が進まないのではとの懸念もある。例えば技術的な面では、全体最適のための技術的な具体案は出ていない。ある関係者は「各省庁で共通的なデータ項目を整理せずに進めば、あとで問題が起こる」と指摘する。複数のシステムを連携するたびに、データ変換が必要となるからだ。

 現時点での方策として総務省 行政管理局の阿向(あこう)泰二郎副管理官は、「担当省庁が最適化計画を作るに当たって、その他の省庁の業務も分析し、合意を得るようにする」という。さらに「情報化統括責任者(CIO)補佐官連絡会議」を技術的な合意の場とする。

 現場の反抗も懸念されている。別々のやり方で行ってきた各省庁の業務を、おいそれと統一できるとは考えにくい。また最適化計画は業務手続きの簡素化を含んでおり、人員削減につながる。抵抗勢力にどう対処するのかといった質問に対し阿向副管理官は、「共通化は電子政府構築計画で決まった大きな流れだ。システム化が全体最適に沿わない理由に合理的な説明がなければ財政当局や総務省のチェックによって予算がつかないだろう」と語る。トップダウンには進みそうだが、現場の合意形成にはまだ懸念が残る。

(森側 真一)