アイワイバンク銀行(IYバンク)が勘定系システムの全面オープン化に踏み切ることが分かった。日立製作所のメインフレームから、日本ユニシスの大型IAサーバーES7000に乗り換える可能性が高い。OSにはWindowsを採用。稼働時期は2005年秋の見込みだ。日立は同行の主要株主である。

表●アイワイバンク銀行の主な株主と持ち株比率(2003年9月現在)
 イトーヨーカ堂グループのIYバンクは2001年5月の開業以来、3台の日立製メインフレーム「MP5600」を使って勘定系システムを動かしてきた。同行の勘定系刷新は単なるレガシー・システムのオープン化や担当ベンダーの乗り換えにとどまらない。日立はIYバンクの主要株主でもある([拡大表示])。

 株主の日立製品の利用をやめてまでIYバンクがリプレースを断行しようとするのには理由がある。同行は2003年9月期で200億円を超える未処理損失を計上。同期の中間決算では1億円の黒字を達成したものの、累積赤字を解消するにはシステム費用の削減が喫緊の課題であることに変わりはない。

 セブン-イレブンやイトーヨーカドーを中心に、同行が保有するATM(現金自動預け払い機)の総数は7131台(2003年12月19日時点)に達する。同行は、「ATMの増強や地方展開、提携先金融機関の増加など、当面はATM事業基盤の確立に注力して経営資源を集中していく方針」(企画部)で、ATM関連の投資額は今後ますます膨らむことが予想される。

 システム全体の投資額は2003年9月期で52億円。ATMを増やしながら、全体のコストをできるだけ低く抑えるには、勘定系システムでコストを絞るしか手がない。

 そこでIYバンクは、日本ユニシスの大型IAサーバーES7000とWindows Datacenter Serverで勘定系システムを構築することをほぼ決めた。既存の勘定系に比べて毎年の維持コストを2~3割削減するのが目標だ。30億円前後のシステム刷新費用が発生するとみられるが、数年後をメドにシステム関連の総コストの低減を図る。

 新システムの詳細は今後詰めるが、業務アプリケーションは日本ユニシスが同社のパッケージ製品を基に開発する方向で検討する。ミドルウエアもユニシスの金融機関向け製品「MIDMOST」を使う公算が大きい。データベースはマイクロソフトのSQL Serverを使うとみられる。稼働時期は、日立製メインフレームの償却が終わる2005年秋の可能性が高い。

 ユニシスにとっては、百五銀行(三重県)に続くWindows勘定系の案件獲得となりそうだ。一方で悔やんでも悔やみきれないのが日立。日立はリプレースを仕掛けたユニシスとの間で、金融機関向けミドルウエアを相互供給するなどの提携関係にある。だが、今回の件で両社が協力した形跡はない。

 あるITベンダーの幹部は、「日立は顧客からRFP(提案依頼書)が出てからの勝負はめっぽう強い。価格や根回しなどの手を尽くして総攻撃をかけるからだ。ただ受注の成否を分けるのは、顧客がRFPを作成するまでに、いかに顧客に食い込み影響を与えられるかだ」と日立の仕掛けの遅さを指摘する。

 なお、IYバンクは本誌の勘定系リプレースに関する事実確認に、「コメントを差し控えたい」(企画部)と回答した。

(大和田 尚孝)